大型特定建物分析の積算見積もりへの応用
ビルメンテナンス情報
大型特定建物分析の積算見積もりへの応用
著 木村光成 さん
1:入札関連情報の蓄積、関連づけ、分析の必要性
通常発表される入札情報は、価格と受注者名を示すだけである。関係者は、その受注者と発注者の内容、力関係ついては公表しない。
しかし、関連資料を集め、総合的に分析することにより、企業の入札方針を決めるデータが得られる。積算情報は、分析によって始めて使用可能な状態になるともいえる。しかし、この分析値は公表はできない。談合情報を公表できるわけがない。
これを行うのがコンサルタント会社であるが、彼らの情報はビルメン情報と異なり、具体性に乏しい。顧客満足度は判っても、クレーム対応など具体的な指示は出せない。現在のコンサルタント会社のそれは、ビルメンへの指示ではなく提案である、提案は抽象的であり、具体案ではない。現場を知らない泣きどころである。
たとえば、ビル管法が適応される特定建築物のデーターは、ビルメン業界にとって重要な情報を提供してくれる。A:価格にうるさいオーナーである。B:親方日の丸の管理会社である。C:価格より品質に重点を置く現場である。D:鼻薬が効きやすい。E:価格と品質ともに非常に厳しい。……等々。
しかし、これらの特徴の複雑化、多様化の原因は、ビルの証券化である。以前は、ビル所有者と管理者が同じであるのが通常であった。しかし、ビルの大型化により、所有者が複数化し、それがさらに証券化によって無数の所有者へと細分化されつつある。
これらの証券化されたビルの所有者たちは、ビルのメンテナンスや運営など、細部に関しては関心がない。ただ配当、すなわち利回りの大きさにのみ関心をもっている。ビルの管理費は低いほど良い。清掃に至っては0が理想である。将来の利益よりも、今の利益である。
この一方、1社所有のビルであれば、このような考えは薄い。極端な場合は親方日の丸タイプになる可能性もあるが、その反面、方針が見えやすい。
その理由は、下請けの管理会社、ビルメンテナンス会社の設立時の目的に、退職者の受け入れや母子家庭などの救済面が過去にも現在も存在するからであり、利益追求だけでない良い面が存在している。このようなビルメンの目からの分析は、管理会社への交渉で大きな武器になる。
2:分析の例
以前のビル(サンプルビル)では、届出者と所有者は同一であった。しかし、最近の大型ビルでは一致しない例が多い。その内訳は、地権者と出資者が多く、外国の投資会社や特定目的会社が増加している。その下のビルメンも、これにより系列されている。
以下の表を見ただけでも受注しているビルメン業者を推測でき、メンテナンスの特徴をとらえられるスキルの蓄積が必要であり、これらについてはセミナーで毎年報告している。これからメンテナンスの方向性や、価格内容なども推測できるのが、見積もり積算の常識ともいえる。
そして、この表は、東京の事務所ビルの事例で面積ランクであるが、ここに記載された不動産会社、マネジメント、投資会社などは日本の大手を網羅しているため、全国的にも通用する。たとえばランドマークや川崎のソリッドスクエアーなどが、その例である。
また、これらのビルの床材の方向性の把握・推測も、ビルメンの大切な分析項目の1つである。
大型ビルには、ビルメンの下請け会があり、良い分析資料が入手できる。たとえば横浜ランドマークの風旗会は、30社を超える会である。また、サンシャインシティは、2008年3月、三菱地所が59%の株を取得した。
大型特定建物分析の積算見積もりへの応用
著 木村光成 さん
1:入札関連情報の蓄積、関連づけ、分析の必要性
通常発表される入札情報は、価格と受注者名を示すだけである。関係者は、その受注者と発注者の内容、力関係ついては公表しない。
しかし、関連資料を集め、総合的に分析することにより、企業の入札方針を決めるデータが得られる。積算情報は、分析によって始めて使用可能な状態になるともいえる。しかし、この分析値は公表はできない。談合情報を公表できるわけがない。
これを行うのがコンサルタント会社であるが、彼らの情報はビルメン情報と異なり、具体性に乏しい。顧客満足度は判っても、クレーム対応など具体的な指示は出せない。現在のコンサルタント会社のそれは、ビルメンへの指示ではなく提案である、提案は抽象的であり、具体案ではない。現場を知らない泣きどころである。
たとえば、ビル管法が適応される特定建築物のデーターは、ビルメン業界にとって重要な情報を提供してくれる。A:価格にうるさいオーナーである。B:親方日の丸の管理会社である。C:価格より品質に重点を置く現場である。D:鼻薬が効きやすい。E:価格と品質ともに非常に厳しい。……等々。
しかし、これらの特徴の複雑化、多様化の原因は、ビルの証券化である。以前は、ビル所有者と管理者が同じであるのが通常であった。しかし、ビルの大型化により、所有者が複数化し、それがさらに証券化によって無数の所有者へと細分化されつつある。
これらの証券化されたビルの所有者たちは、ビルのメンテナンスや運営など、細部に関しては関心がない。ただ配当、すなわち利回りの大きさにのみ関心をもっている。ビルの管理費は低いほど良い。清掃に至っては0が理想である。将来の利益よりも、今の利益である。
この一方、1社所有のビルであれば、このような考えは薄い。極端な場合は親方日の丸タイプになる可能性もあるが、その反面、方針が見えやすい。
その理由は、下請けの管理会社、ビルメンテナンス会社の設立時の目的に、退職者の受け入れや母子家庭などの救済面が過去にも現在も存在するからであり、利益追求だけでない良い面が存在している。このようなビルメンの目からの分析は、管理会社への交渉で大きな武器になる。
2:分析の例
以前のビル(サンプルビル)では、届出者と所有者は同一であった。しかし、最近の大型ビルでは一致しない例が多い。その内訳は、地権者と出資者が多く、外国の投資会社や特定目的会社が増加している。その下のビルメンも、これにより系列されている。
以下の表を見ただけでも受注しているビルメン業者を推測でき、メンテナンスの特徴をとらえられるスキルの蓄積が必要であり、これらについてはセミナーで毎年報告している。これからメンテナンスの方向性や、価格内容なども推測できるのが、見積もり積算の常識ともいえる。
そして、この表は、東京の事務所ビルの事例で面積ランクであるが、ここに記載された不動産会社、マネジメント、投資会社などは日本の大手を網羅しているため、全国的にも通用する。たとえばランドマークや川崎のソリッドスクエアーなどが、その例である。
また、これらのビルの床材の方向性の把握・推測も、ビルメンの大切な分析項目の1つである。
大型ビルには、ビルメンの下請け会があり、良い分析資料が入手できる。たとえば横浜ランドマークの風旗会は、30社を超える会である。また、サンシャインシティは、2008年3月、三菱地所が59%の株を取得した。
特定大型建物一覧表 | |||
施設名 | 届出者名 | 所有者名 | 面積 |
六本木ヒルズ森タワー | 森ビル | 六本木ヒルズ森タワー管理組合 | 380,000 |
品川インターシティ | 品川インターシティマネジメント | 大林組 | 313,000 |
住友生命相互会社 | |||
興和品川開発 | |||
ゲートシティ大崎 | 業務商業棟全体管理組合 | 業務商業棟全体管理組合 | 291,000 |
品川シーサイドフォレスト | ジェイティ不動産 | 武田薬品 | |
品川シーサイドフォレスト管理組合 | |||
日本たばこ産業 | |||
ミッドタウンタワー | 東京ミッドタウンマネジメント | 大同生命 | 246,000 |
全共済 | |||
積水ハウス | |||
富国生命 | |||
アールピー アルファ特定目的会社 | |||
アールピー ベータ特定目的会社 | |||
アールピー デルタ特定目的会社 | |||
アールピー イプシロン特定目的会社 | |||
アールピー ガンマ特定目的会社 | |||
アールピー エータ特定目的会社 | |||
東京オペラシティビル | 東京オペラシティビル | 山大鉄商 | 242,000 |
相互物産 | |||
京王電鉄 | |||
ジャパンリアルエステイト投資 | |||
昭和シェル石油 | |||
小田急電鉄 | |||
エヌテイテイ都市開発 | |||
日本生命 | |||
山王パークタワー | 三菱地所ポロパテーマネジメント | 大日本企業 | 219,000 |
菱進不動産 | |||
安全自動車 | |||
山王リアルエステート | |||
新日本実業 | |||
日交総本社 | |||
清水建設 | |||
三菱地所 | |||
東京都第一本庁舎 | 東京都 | 東京都 | 196,000 |
サンシャイン60 | サンシャインシティ | サンシャインシティ | 191,000 |
新宿センタービル | 東京オペラシティ管理 | 東京建物 | 183,000 |
朝日生命 | |||
明治安田生命 | |||
聖路加ガーデン | エスエルタワーズ | 日本生命 | 170,000 |
東急不動産 | |||
三井不動産 | |||
豊秀興産 | |||
大森ベルポート | 第一ビルディング | 第一生命 | 169,000 |
みずほ信託 | |||
新宿NSビル | 新宿NSビル | 住友不動産 | 167,000 |
日本生命 | |||
恵比寿ガーデンプレイス | 恵比寿ガーデンプレイス | 恵比寿ガーデンプレイス | 162,000 |
秋葉原UDX | UDX特定目的会社 | UDX特定目的会社 | 161,000 |
世界貿易センタービル | 世界貿易センタービルディング | 世界貿易センタービルディング | 154,000 |
シンクパークタワー(大崎) | シンクパークタワー管理組合 | 明電舎 | 152,000 |
世界貿易センタービル | |||
シンクパークタワー管理組合 | |||
シーフォートスクエア | シーフォートコミニテー | シテーバンクエヌエー | 148,000 |
三菱商事 | |||
JTBエステート | |||
第一阪急ホテル | |||
グラン東京サウスタワー | JR東日本ビルディング | 140,000 | |
鹿島八重洲開発 | |||
新日本石油 | |||
大崎ニューシテー | 大崎再開発ビル | 東映(4号棟) | 138,000 |
勧業不動産(5号棟) | |||
大崎再開発ビル(5号棟) | |||
日本精工(3号棟) | |||
日本精工不動産(35号棟) | |||
朝日生命(4号棟) | |||
テーオーシー(125号棟) | |||
東建ビルディング | |||
霞ヶ関ビル | 三井不動産 | 三井不動産 | 133,000 |
(社)霞会館 | |||
日本ビルディング | 三菱地所 | 三菱地所 | 133,000 |
晴海トリトンスクエア オフィスタワーX |
第一ビルディング | 晴海トリトンスクエア オフィスタワーX |
131,000 |
晴海トリトンスクエア オフィスタワーZ |
第一ビルディング | 日本建築センター | 104,000 |
大林組 | |||
住商情報システム | |||
三井物産ビル | 三井物産 | 三井物産 | 125,000 |
新青山ビル | 三菱地所 | 三菱地所 | 102,000 |
警視庁本庁舎 | 警視庁 | 東京都 | 99,000 |
※事務所ビルを抜粋。 太字はサンプルビル。 サンプルビルとは、50年程度、そのビルの状況をビルメン現場の目線で記録してある比較用のビル。 この表は、積算、見積もり用の表であり、表示部分、特に数値は概略である。 |