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ビルメンの研究は横浜から始まった

ビルメンテナンス情報
『ビルメンの研究は横浜から始まった』
ビルメン廃棄資料の見直しと応用

著 木村光成 先生

ビルメン業界には、ハウスシックの研究はアメリカが最新であるかのような考えがあり、対応システムや資機材を輸入販売する傾向が強い。しかし、これはビルメン用資機材の販売会社など(マシン販売のテナント社、カーぺット資格販売会社、日本カーぺットクリーナーズアカデミー)の宣伝が作り出したものである。
アメリカ製品が全て優れていて、メンテナンスについて日本は後進国というのは間違いである。
世界のハウスシックの研究は、横浜から始まったといってもよい。

もちろんアメリカ製品に優れた物が無いとは言わない。
しかし、アメリカは京都議定書に未調印であり、清掃機械の部品はインチ法でISOではない。120ボルト仕様の機械が、そのまま日本で販売されている。また最近は燐を含んだ輸入洗剤が増えている。
最近よく使われる事例の「アメリカではカーぺットの使用期間は30年」というデータの出所も明確でない。カーペットの耐久期間は、カーぺットの素材、目付き、使用頻度、色調などにより大きく変化する。この30年使用可能説が、わが国でビルメンの値切り手段として管理会社に使われている。
アメリカのシステムが完全でないことは、1月の牛肉検査問題でも証明されている。

ハウスシックを含む公害問題では、わが国の研究は最先端にある。
水俣病、四日市喘息、川崎病など、わが国はハウスシックについて、その発生も研究も世界レベルであり、その様になる必然性が存在した。それは、わが国の気象と生活様式にある。

1:夏の高湿度。
2:住宅の狭さ。
3:共稼ぎで昼間は不在。
4:畳に素足の生活。
5:コンクリートの密閉住宅。
6:湿度温度調整は空調に頼り、換気なし。
7:清掃より殺虫剤、防カビ剤散布。

これだけ列挙すれば、わが国はハウスシックの中心地になる条件が揃いすぎていることが、お解かりいただけるであろう。

世界共通の清掃システムなど存在しない。
カーぺットについてだけでも、わが国ではまず畳であり、場合によればベッドである。洋風化したといえども根底には畳の生活がある。カビや細菌の落下試験でも、座った高さで行う必要がある。
このような気候風土、生活様式の異なるわが国に、アメリカ型の清掃方をそのまま持ち込む事が間違いであり、現在のハウスシック問題も、日本の気候風土を無視して洋風生活を導入したことが原因である。
また、このような生活様式にパウダークリーニングの実施は、厚生科学研究での評価法、透視度法で比較評価しても、適切な技法ではない。清掃効率も悪い。

世界のハウスシック研究の先駆けになった、故・大島司郎博士(横浜衛研)の研究は次のようなものである。
1964年、横浜の小学校で児童の間に掻痒症が発生した。そして、その木床のダストから、かなりのダニが発見され、掻痒症とダニの関係が明らかになった。同じ時期、オランダのブロンズウィツク博士も同様の論文を発表した。
この研究が元になり、新しい学問『ハウスダストバイオロジー(ハウスダストの生物学)』という体系が作られた。
しかし、大島先生は筑波の研究所に移られた後、若くして病を得られ亡くなられた。その原因は、研究に大量に使用した塩素系溶剤と噂されている。

その後、80年代にカーペットのダニ騒動が起こり、1983年には厚生省による厚生科学研究が行われた。
これらの研究は厚生省、環境庁の予算で行われ、80年代当時トップクラスの研究者を集めた研究であった。
この時の研究が、現在のビル環法や最近の厚生省のハウスシックの定義づけなどに現れてきている。

しかし、故・森谷清樹博士(神奈川衛生研究所)、林喬先生(戸塚クリーニング総合研究所)による、ビルメンテナンスのためのカーぺット研究を、ビルメン業界は全て目をそらしてきた。その理由は「3000㎡以上のビルにはダニはいない。ダニはビルメンに無関係である」という建前を取ったからである。
森谷博士は、カーペットの厚生科学研究を通し、ハウスダスト研究とビルメンでの応用を研究されていた。先生には厚生研究をはじめ、3年間ご指導願い、ランドマーク、新幹線車両のハウスダスト分析などを行った。神奈川県立博物館に移られてからは石材メンテナンス、木材メンテナンスに関する博物館資料を使用させていただいた。先生も病にかかられ、ご自身は述べられなかったが、1年の余命と告げられていた。
これらの研究をビルメン業界に広く知らせる事が、残されたものの義務と考えている。

ビルメン業界での研究セミナーと、ビルメンのための顕微鏡の使い方、ハウスダストの生物学の講演を、春原、島岡、中山氏と共にビルメン協会にお願いしたが、反対が強く実現できなかった。
最近、アメリカのカーぺットシステム販売業者による、「日本の研究は50年遅れている」とのコメントを聞き、ハウスシック研究の開拓者である大島司郎博士、森谷清樹博士の名誉のためにも、ビルメン業界が無視してきた未公開研究を公開する必要を感じている。
故・春原氏(ビルメン情報センター)と、研究に参加した船越氏と共に、廃棄されていた資料を集めて発表する予定を立てたが、春原氏の急逝で予定が遅れている。
現在ある40年間のビルメン関連資料は、写真4000枚をはじめ、顕微鏡標本、石材、木材など、かなりの量になる。現在デジタル化を進めているが、かなり時間がかかる。また、石材、カーぺット、陶磁タイル製造工程など、ビデオ類もデジタル化して公開したいと考えている。

発表の緊急性がある資料
1:大島、森谷、林先生の研究論文と、ビルメン資料。
大島、森谷先生のシックハウスの研究。林先生の残留洗剤の研究。
2:関連協会テキストで作成され、廃棄されたもの。
石材メンテナンス続編、クレーム対応、ビルメンのための石材辞典(東京協会)、
木材メンテナンス、ハウスクリーニングのための石材メンテナンス、など。
3:写真4000点。石材、カーぺット、トイレ陶器の製造工程ビデオ。


ビルメン業界が公表していない横浜研究の要点
1:ハウスシックの原因はハウスダスト
特定化学物質だけがシックハウスの原因ではない。アレルゲンの集合体。
大島博士は40年前に現在を予測している。学校の木床のダニの研究。
2:ハウスダストの考え方と、ビルメンのための簡易分離法。
3:好乾性カビ類の存在。
4:ハウスダストの微気象。
5:今後のシックハウス対策は薬品散布ではなく清掃が主体。
清掃より作業が楽ではあるが、薬品には健康に問題があるものが多い。
6:清掃機械の性能管理の必要性。
自動床洗浄機には、バキューム吸引力表示が無いか不正確なものが多い。
20年前の建設、通産研究で、これらの性能測定は反対された。
7:清掃の品質は、外見上のきれいさだけでなく、衛生上のきれいさが必要。
物より人の健康、見えない汚れの除去
8:ビルメン受注価格低落の歯止め。
外見上のきれいさを対象にすれば受注価格はそのものの価格。
衛生的きれいさを対象にすれば、健康は価格に換算できない。
9:現場でできるハウスダスト分析。
10:ビルメンのための顕微鏡の使い方の公開

顕微鏡はハウスダスト分析にはぜひ必要な機材である。そのほか、カーぺット判別、木床の材質、石材判別、モップブラシの品質判別など応用範囲が広い。最近は資機材の内容がカタログと異なるものも多い。これらの判別にも有用である。


公開資料
1:大島司郎博士論文
40年前の、大島先生のハウスダストからダニの抽出法が、いかに手間をかけた精密なものかを確認し、我々が現在簡易な検出法が行えるのは、先生のおかげであることを知る必要がある。もちろん、わが国のダニ学者、アレルギー研究学者の先達の存在があったことが大きな力であった。
ビルメン業界として興味を持つことは、ハウスダスト採取用バキュームの真空度を明記していることである。販売業者の反対で行われていないが、自動床洗浄機をはじめとする清掃機械の性能管理で、真空度測定を行う必要がある。また、輸入清掃機の中には、外国仕様のままのものが多く、性能がカタログ数値を下回る機械は、ハウスシック防止の性能も落ちる。
また、パウダークリーニングは特殊な現場だけの限定使用にすべきである。残留パウダーはハウスダストそのものである。

2:大島先生への外国よりの追悼文
最近の外国ハウスシック対策商品やシステム、特にカーぺットメンテシステム販売の広告で、日本はハウスシック対策や、カーぺットメンテシステム研究の後進国であるかのような説明がなされているが、全く事実に反する。

3:春原氏書簡、ビルメン廃棄資料について
ビルメン関連の研究や資料が廃棄されている。

追記
最近、掃除機の性能測定法が変わり、散布人工ダストの回収率であらわす方法が採用され、生活センターでテスト結果が発表されている。回収率は56.4%~31.0%であり、大阪衛生研究所の吉田先生が、昔述べられた「アップライトは取れない」という実験結果を裏付けている。特に輸入品は性能の差が大きい。
高性能の掃除機の使用がクレーム防止の基本である。

参考資料:ビルメンの歴史参照



この資料はビルメン研究者間の資料であり、公式資料ではありません。

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