ガラスクレーム多発 熱割れ
ビルメンテナンス情報
ガラスクレーム多発 熱割れ
著 木村光成 さん
1:ガラス熱割れの増加
この夏は、かなりの数のガラスクレームが報告された。やはり異常気象が関係しているのだろうか。
最近のビルは大型ガラスが多く交換費用も高額になる。そして、まずクレームはビルメンの責任になる。
熱割れは、突然大きなガラスにひびが入り、割れる現象である。比較的冬に多く、ガラスの部分的な温度差が原因となる。
温度差が生じる原因としては……
A:部分的な張り紙。
B:冷房の吹き出しが部分的に当たる。
C:家具やロッカーなどをガラスに密着しておく。
D:熱線反射フィルムが室内側に張られている。
……以上の4つが挙げられる。
特に D の例が多いと思われるのは、室外側に張るとフィルムの耐久性が落ちるためといわれる。
また、網入りガラスは熱割れしやすい。ブラインド、カーテンも熱割れの原因になる。
各現場の状態を把握して、熱割れの危険度を把握しておくことである。できれば文書化しておくことである。このためには、これらの判別技術を身につける必要がある。
2:ガラスの使用目的が変わった
ガラスは、以前の使用目的は採光用の窓ガラスであった。しかし、現在は使用目的が大きく変わっている。ガラス自体がビルの構造材として使用されている。そして、ガラスも機能ガラスとして多くの目的に使われている。
まず目につくのは、大型ガラスと、ビルの外壁に使用されるガラスの面の増大である。いわゆるガラスビルの増加であり、この点でビルの建築年代が一目でわかる。そのうえ、ガラス同士の連結も、窓枠ではなくボルト金具による直接の結合である(右写真)。
3:ガラスは今後も増加する
ガラスの利点は資源の豊富さにあり、公害とは無縁の素材であるうえに、再生が簡単にできる。
その事例は、セメントテラゾーのガラス入りの増加である。最近新設された地下鉄の床には、必ず使用されている。そして機能フイルムによって、後から機能の追加やデザインの変更が可能である。
外壁は天然石の時代は終わっている。
4:ガラスの日常マニュアルの必要性
このように、ガラスは大きな変化を遂げつつある。
当然、メンテナンス側も、日常メンテナンス法も、変化への対応が要求される。
清掃はガラス屋に丸投げというわけにいかない。熱割れの増加も警鐘のひとつといえる。洗剤ひとつをとっても、汚れの原因になるメタ珪入り洗剤の使用禁止は必要である。
5:ガラスの汚れの変化
ガラスの汚れも大きく変化している。
1:ビルのグリーン化による有機物汚れの増加。
2:中水の植栽への散水によるケイ酸汚れの増加。
これらに対処するために、ガラスクリーニング協会による簡易分析法の普及と、協会での分析機器の完備が要求される。
外装材の表面を写し取るスンプ法。汚れ、特に石材、ガラス、セラミックの汚れ分析に必要なX線蛍光分析とX線回析は必要であり、公益の協会であれば、低価格で借りられるはずである。