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19年度 第1回こころみの会 

19年度 第1回こころみの会

実施日:2007年2月22日
会 場:産業貿易センタービル
主 催:こころみの会

講義1:『ビルメンテナンス業界における「第二の創業」 産業の構造変化とイノベーション』
講義2:『石材のクレーム対応システムについて』
講義3:『電解水(機器・電解水)利用システムについて』

講義1:
 『ビルメンテナンス業界における「第二の創業」
  産業の構造変化とイノベーション』

講師:ブレイズコンサルティング株式会社 田中氏

 講師の田中先生は、ビルメンテナンス資材の企業から経営コンサルタントに転身した方で、ある事情から、再びビルメンテナンス企業に関わるようになったそうです。
 今回は『ある程度はビルメンテナンス業の知識がある経営コンサルタント』という立場から、お話いただきました。

 まずは現状に対する捉え方について、以下の例が挙がりました。
  ・今は経営環境が良くないが、景気が良くなれば業績は回復するだろう。
  ・価格競争が厳しいので、値下げも仕方ない。
  ・大手企業は良いが、中小は不利。


 しかし、これは誤解で、現実的には、以下のように捉えるべきというのが、先生の考えです。
  ・他力本願から抜けきれない企業は生き残れない。
  ・価格以外の価値を提案できない企業は生き残れない。
  ・「規模の経済性」が機能しない産業では、大手が有利とは限らない。


 次に、過去三年間の売上高変化から、平成14年度を基準に、17年度までの事業規模別の成長率を比較した表が提示されました。

 その表からは、事業規模1億~2億の企業では、ほぼ平行状態で変化無し。それ以上は数パーセントの成長。一方で、それ以下の事業規模ではマイナス成長。特に事業規模500万円未満の企業では、60~70%程度のマイナス成長になっている……といった結果が読み取れます。
 特に違いが顕著なのは『投資効率』で、機材などに、いくら投資して、そこからいくら利益をあげたかという値でした。これも大手ほど大きく、3千万円以下と5億円以上の企業では、効率が5倍近くも違うというデータがありました。

 以上のデータを、そのまま受け取れば、やはり『大手は良いが、中小は不利』という結論に至ります。しかし、ここで語られているのは有利不利の問題ではなく、『同じ仕事をしていては、大手にかなわない』ということなのです。

 今、ビルメンテナンス業界では次のようなことが起きています。
 ・他業種の大手企業から、ビルメンテナンス業への新規参入。
 ・大手企業や制度変更による、顧客の交渉力の向上。
 ・資材供給業者の顧客への影響力拡大。
 ・労働力確保コストの上昇。
 ・メンテナンスフリー製品の流行など、代替品の脅威拡大。
 これらの要因から、業界内での敵対関係を加味された結果として、過当競争による価格破壊や、収益性の低下、業界内での二極化が進んでいるそうです。
 そして、たとえ今後、景気が良くなったとしても、『既存の事業モデルに依存する企業』『新しいフィールドに進む企業』との、二極化が進んだまま固定されてしまい、以降は『企業規模でなく、戦略の優劣が今後の成長を決める』と主張されています。
 曰く「業界全体が成長する時代は、もう来ないと考えるべき」ということです。

 ここで、もうひとつのキーワード『イノベーション』について説明がありました。
 世間ではイノベーションを「技術革新」や「発明発見」であるかのように捉えていますが、実際には、『利用可能な「もの」や「ちから」を、従来とは異なる形で結合させて「経済効果をもたらす革新」』を意味しているそうです。

 イノベーションの5つのタイプ
  ・消費者に知られていない、新しい商品や、商品の新しい品質の開発。
  ・未知の生産方法の開発(商品の新しい取扱い方法も含む)。
  ・従来、参加していなかった市場の開拓。
  ・原料ないし半製品に、新しい供給源の獲得。
  ・新しい組織の実現。

 これまでの仕事と、全く違う新事業を発明するという意味ではないけれど、現状の見直し、新たに企業を創設するくらいの抜本的再構築(これがタイトルにある『第二の創業』にあたります)を行い、独自性や優れた戦略を編みだすことによって、企業の成長を図るべき……ということなのでしょう。

 最後に、先生のお話にあったイノベーションについてヒントになりそうなことを列挙しておきます。
・中小企業が大手の戦略を後追いしても無意味。
・顧客のニーズを探り、独自性を作り出す。
・単なる建物の管理から「そこで生活する人」「活動する企業」に目を向けると、新しい顧客ニーズが見えてくる。
・「業界の常識」を疑う。思い込みは無意味。常識は、その時点でのリーダー企業にのみ有利。
・良し悪しの価値基準は顧客にある。
・次世代のイノベーションが起きた時、前世代のイノベーションのリーダー企業は凋落する。

講義2:
 『石材のクレーム対応システムについて』
講師:マルタカ 杉本氏(こころみの会 石材鑑定ドクター)

 講師の杉本先生は、石材の取扱いや、トラブルの解決を専門に研究されています。
 今回は、いかに石の扱いが難しいか、石にまつわるトラブルを回避するには、どんなことに注意すべきかを講義していただきました。

 まず石(石材)は、たとえ表面を磨きこまれて均一な面に見えたとしても、微視的に見れば穴だらけの、スポンジのような状態であると認識することが重要です。
 これは、石は吸水性が良い素材であることを意味し、石のトラブルは水に原因していることが多いことに関係しています。もちろん、吸水性が良いということは、水だけでなく、洗剤や油分、塗料や溶剤などの液体にも注意が必要です。
 そんな石に対して薬品を用いる一つの方法として「作業前に十分に水を撒き、染み込む分は染み込ませてしまう」というのがあります。こうすれば、薬品が石の中に入る危険を低減できるでしょう。


 ありがちな石材トラブルについて、会場では写真を交えて解説していただきました。
石材トラブルの例
雨水の成分や、隣接するコンクリートからカルシウム等の成分が溶け出し、結晶して石の表面を汚す。
石に含まれている水分が凍って膨張する。壁等の表面を押し出し、変形となって発覚。
パネル状の石材で、下地の成分が表面に染み出して汚れになってしまう。
石に落書きされてしまうと、塗料が内部にまで浸透してしまい、消すのに手間も予算も必要になる。
コート剤で石材表面を塞いでしまうと、石に含まれる水分が出入りできないまま表面に集まり、斑模様になってしまう。
輸入大理石などで、表面を光らせるのに薬品を用いている場合、施工後に薬品が剥がれて艶にムラができてしまう。
石材の欠けた部分を、樹脂の補修材で見た目だけ修復しても、石と違って樹脂は水を吸わないので、雨が降ると色調変化の違いから、補修部分が目立ってしまう。 また、樹脂部分が日光に曝されているうちに劣化してしまう。
酸で石の表面を溶かしてしまい、粉を吹いたようになってしまう。
作業中、洗剤や薬剤の容器を放置すると、染み痕がついてしまう。

 石の取扱いは、たいへん難しいと先生は警告されています。

 石の扱いには知識と技術が必要で、受注するにも、それなりの料金設定をしておく必要があります。
 石材の存在を考慮せずに「床面積あたりいくら」で受注すると、作業内容に相応しい代金を受け取り損ねてしまいます。まして作業員に石の知識がなければ、トラブルの発生から補償問題になり、大損害につながる恐れがあります。
 トラブルを生じてしまうのは仕方のないことですが、原因も対策も理解できないまま修復を試みるのには問題があります。まして問題を解決できなければ、手間と時間を損するばかりでなく、お客様の信頼を損ねてしまうでしょう。

 作業の難しい石材がある場合、トラブルの可能性について、事前にオーナーへの提案をしておくのが理想的です。これは価格設定のためにも必要でしょう。
 事前の説明が無い場合、トラブルを生じてから原因を説明すると、たとえ説明が正しくても、オーナーには言い逃れに聞こえてしまうかもしれません。

 もうひとつ、石に起きるトラブルのうち、立地条件や施工に原因のある場合が考えられます。この場合、いくら石に手を入れても問題は改善されず、再びトラブルになるかもしれません。これも事前に提案しておかないと、ビルメン業者には責任がないのに、無駄な修復作業を背負い込むことになりかねません。

 立地や施工を原因とする例には、以下のようなものが挙げられます。
  ・位置が低く水の流れ込みやすい場所。
  ・上から入り込まなくても、地盤が緩くて下地に入り込みやすい構造。
  ・石の下に配管があって、結露などによって水が生じる場合。

 石の知識がなければ、迂闊に手を出して対応を誤るよりも、専門家の助けを求めた方が賢明です。
 ビルメンに非の無いトラブルが生じた時、専門家が第三者からの立場から適切な説明をすれば、修復作業に料金を発生することもできますし、会社が信頼を損ねることもありません。


講義3:
 『電解水(機器・電解水)利用システムについて』
講師:キューブ 東海氏

 食塩と水道水を電気分解することで、強酸性・強アルカリ性の電解水を生成する装置の説明と、この電解水をビルメンテナンス分野で活用するための提案が行われました。

 今回紹介のあった装置は、最近主流の三層式と呼ばれる装置です。旧式の電解装置とは違い、生成された電解水に余分な塩分が含まれません。これによって、旧式装置のような長期使用による塩害発生の心配が無くなったそうです。

 電解水には、強力な殺菌力などの特徴があり、様々な分野で活用されています。
 薬品を用いていないので、洗浄に用いた場合、すすぎの回数を低減することができます。また、洗剤の希釈用として適切に用いれば、単に水道水で希釈した場合よりも大きな効果を得られる可能性があります。
 原料は、食塩、水道水、そして電気だけで、強酸・強アルカリに分解されるので、それぞれを適材適所にコンスタントに用いることで、コストを低減させることができます。

左写真:ポータブルタイプの電解装置による、電解水生成実験。

下写真:会場で生成した電解水を用いて、カーペットの汚れを落とす実験。

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