ビルメンテナンス業務改善事例発表会 -清掃の部
ビルメンヒューマンフェア '05 in九州
ビルメンテナンス業務改善事例発表会
清掃の部
第一建築サービス(株) 『カーペットけもの道撲滅大作戦』
ファースト・ファシリティーズ(株) 『誤廃棄をなくそう』
サマンサジャパン(株) 『ひとりひとりが魅せる清掃をしよう!!』
星光ビルサービス(株) 『ISO方式の応用による資機材管理徹底』
(株)ハリマビステム 『テナントごとのゴミ回収のルール作り』
昭和建物管理(株) 『魅せる清掃を求めて-トイレ編-』
●清掃の部
ファースト・ファシリティーズ(株) 『誤廃棄をなくそう』 清掃業務のなかでもゴミ回収作業は重要な作業です。しかし、現場を利用する者と清掃する者が違う状況においては、日々の清掃中に「これはゴミだろう」という作業員の判断で、お客様の書類や品物を誤って捨ててしまう……といった事故が後を絶ちません。 そういった事故の要因には「ゴミ箱の周囲に置いてあるダンボール箱」「ゴミ箱に立ててあった傘」「ゴミ箱の上に置かれた書類や紙袋」……等々、ゴミ箱以外の場所から、作業員が自己判断で捨ててしまうことが挙げられます。 お客様の品物を誤って捨ててしまわないように、誤廃棄を撲滅し、さらなる清掃品質の向上を目指すのが、プロジェクトの目標です。 さて、誤廃棄事故防止のために、以下のような改善策を実施しました。 改善策 ・ 近くのお客様に確認する。 ・ 判らない物には触らない。 ・ ゴミ箱の中身以外は捨てない。 ・ 分別シールなどを貼って、取り扱うゴミ箱を特定する。 ある品物について、それがゴミかどうかは、本来、お客様本人にしか判りません。近くにいらっしゃれば伺うことができますが、ご不在の場合は、作業員が勝手に判断せずに、そのままにしておくしかありません。 ところが、これが問題の変化を招きます。 ゴミ箱の中の物だけを廃棄することを原則として徹底したところ、お客様から「ゴミが放置されている」と苦情が発生するようになり、さらなる改善策を模索することになりました。 新たな改善策として、お客様が不在だった時に、ゴミかどうか判断つきかねる物品に貼りつける「ゴミ捨てOKシール」を考案しました。
そして、このOKシールの使用方法を以下のように定め、運用開始しました。 ・ゴミかゴミでないか、確認できないときに ・ゴミ置き場周辺に置いてある段ボール箱などに ・ゴミ箱の中に入っている傘などに ・ゴミ箱の上にのっている書類やファイルなどに その物の目立つ場所に、日付を記入して貼りつける。 後刻(後日)、シールのミシン目から下が切り離されていれば廃棄して良い。 シールがそのまま、または剥がされていた場合は放置する。 さらに、ゴミ回収用の袋には「ビル名・階数」を記入した荷札を貼付して、万が一間違えて廃棄してしまった場合でも捜索可能な状態にしておくなどの誤廃棄事故防止活動を行いました。 また、ビルのテナント企業には外資系企業も多く、ビル全体が英語標準という状況もあったため、ゴミ捨てOKシールの英語版も運用しています。 このような業務改善活動の結果、全般的に誤廃棄事故は減りましたが、全滅したわけではありません。 今後は、ゴミの取り扱いや、OKシールの使い方をマニュアル化して、さらなる誤廃棄事故の減少を目指します。 |
サマンサジャパン(株) 『ひとりひとりが魅せる清掃をしよう!!』 サブテーマ「仕事の楽しみ方を見つけよう」 発表者は女性ばかりのスタッフで、1日の来院者が推定2100人という大きな病院の一部清掃を担当しています。 このスタッフで仕事についてのアンケートを行ったところ、以下のような問題点が浮かびました。 ・仕事をしていても、楽しくない。 ・職場内で明るい話題が少ない。 ・看護師さんたちと、必要最低限のコミュニケーションしかはかれていない。 ・時々、気持ちの上で「だれてるな」と感じることがある。 このことから、楽しく仕事ができる仕組みを作ろうと、意見がまとまりました。 改善目標は、楽しく仕事ができる仕組みづくりをし、病院内に3H(ハッピー・ハートフル・ヘルシー)の輪を拡げることです。 まず、スタッフが各シフトで感じている「肉体的疲労度」と「精神的疲労度」を調査するため、アンケートを行ってみたところ、シフトに対する疲労度に個人差があることや、場所によっては「肉体的疲労度が高いが精神的疲労度が低い」ことが判ってきました。 次に、仕事を楽しくないと感じる要因を4つの視点(コミュニケーション、作業工程、作業時間、健康状態)から挙げて、その内容を分析しました。 そして、こういったネガティブな部分を、ポジティブな考え方に変えるには、どうすれば良いかを検討した結果、「作業とダイエットを結びつけて考えてみる」という改善策を実施することになりました。 業務改善3H作戦の実施内容 1 作業箇所別の消費カロリーを算出し(万歩計による歩行数測定)、一覧表にまとめて開示した。 2 歩行数・食べ物・消費カロリーの関係をビジュアルに示し、共通の話題作りを行った。 3 休憩時間に”ヘルシーな身体作り”や”魅せる立ち振る舞い”を目指したストレッチなどを、みんなで実行した。
この式を基に、それぞれの作業箇所別に消費カロリーの一覧表を作成しました。 さらに作業を行うことで、どんな食べ物と同じカロリーを消費したか(転じて、作業を行えば、何を食べていいか)をイラスト付きで解説して掲示しました。 掲示内容の例
また、腰痛・肩こりの軽減や、魅せる清掃のためには、姿勢や歩き方も美しくなくては……と、休憩時間にスタッフ全員でストレッチや、ウォーキングの練習などを行いました。 これら改善策の実施によって、対策後のアンケートでは、肉体的・精神的疲労度が軽減し、スタッフ間で「仕事が楽しい」という声が聞かれるようになりました。 また、看護師など病院スタッフの間でも万歩計に関心が集まり、話題作りをすることができました。 おかげで職場が明るくなり、スタッフ間の協調性が高まりました。また、ご利用客様(特に入院の方)へ元気や明るさを差し上げることができました。 |
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この発表は「自分たちの人間性で、ご利用者(入院患者)に感動を与えられることを実感し、さらに努力を重ねていこうという意欲が高まりました」と締めくくられていました。 キッカケは「仕事でダイエット」という考え方の転換でしたが、実際の効果が得られたのは、他の病院関係者とのコミュニケーションがはかれるようになったことが影響したのではないでしょうか。 仕事場に愛着を感じることができれば、特に精神的な疲労を軽減する最大の要因になるのではないかと思います。 |
星光ビルサービス(株) 『ISO方式の応用による資機材管理徹底』 業務改善の対象となったのは、年中無休の大型商業施設です。 大型店舗なだけに資機材の種類や用途が多く、材料の消費がオフィスビルなどよりも格段にかかるため、業務改善によるコスト削減効果が望まれます。 現場では朝8時から夜22時まで作業が行われ、スタッフの人数も多いために、共用資材の管理や責任の所在が曖昧になっていました。特に機材などは、整備の管理担当者が不明確で手入れをするタイミングも掴めず、不調・故障が頻発する状況になっていました。 そこでまずは対策の第1段として、以下の改善を行いました。 対策1:資材を、作業箇所・シフト別に識別 1 タオル・ガラスダスター等に作業箇所を記入 2 ラーグ糸に作業箇所を記入 3 ハンドクリーナーにテプラにて作業箇所を明示 対策2:メンバー全員の意識付け、「安全・ガッチリ提案」への全員参加 ・メンバー全員が責任を持って、資機材の整備を行うように指導。 ・清掃控え室・資機材置き場の整備を実施。 ・取り組み姿勢と模範を示す。 こうした取り組みの結果、以下の様な新たな問題点が浮かび、これを改善しました。 新たなる問題点と解決
こういった整理整頓の効率化の結果、機材の不調や故障が減り、消耗資機材の購入費用が16%相当削減されました。 また、不調や資機材の捜索にかかっていた手間が無くなったおかげで、月あたりの残業時間を65時間から45時間に減らすことができました。 |
(株)ハリマビステム 『テナントごとのゴミ回収のルール作り』 現場はテナントとして多くの事務所が入居している高層ビルで、そのビルの中だけでもテナント毎にゴミの回収方法について要求が違い、スタッフからはゴミの回収が難しいと意見が挙がっていました。 原則としてテナント毎の担当者がいるので、その担当者が出勤できていれば問題は少なかったのですが、担当者が休みの時に代理のスタッフが入ると、テナントのルールを知らず、問題を起こすことが考えられます。 そこでゴミかどうか判断が付かない場合は、回収せずに、その品物に貼り紙をするようにしました。 貼り紙の文面 清掃からのお願い これは廃棄処分してよいか分かりませんでした。 確認のために今回は残しておきますので、次のどちらかに○印をつけてください。 廃棄処分を 1.する 2.しない 社名 連絡先 他にも、ダンボールをゴミ箱に使っている場合などに、ゴミかどうか判断がつかない場合があり「回収されていないゴミ箱がある」「ゴミを置くと決めた区画に出したダンボールが回収されていない」などのクレームが発生していたため、ゴミ箱には赤いビニールテープを貼って識別できるようにしてもらいました。 それでも誤回収事故は発生します。 苦情の発生事例 ・「廃棄」と書いてあるダンボールを廃棄した。 →「機密文章として自ら処理しようとしていたのに捨てられた」 ・ゴミ箱の中にあった書類を廃棄した。 →「書類入れとして使っていたのに回収された」 テナントに対し、誤廃棄事故の防止と、より良いサービスを提供するには、スタッフ全員が、全てのテナント清掃のルールを把握しなければなりません。 そこで考案されたのが「だれでもマップ」です。 だれでもマップには、テナントの配置図に、ゴミ箱の位置とデジカメ撮影の写真、それぞれについての注意点をコメントにして記載してあります。 コメントの例 ・蓋付き灰皿であることを示し、回収忘れのないように指示。 ・各机にゴミ箱が置いてあるが、このゴミは回収しないように指示。 だれでもマップ効果維持のためのルール 1 テナント内でレイアウト変更があった場合は、必ず「だれでもマップ」を更新する。 →責任者 2 「報告」「連絡」「相談」を徹底する。 →全員 3 「だれでもマップ」を必ず見るためには、作業時に持っていく必要があるため、毎朝、作業カートの持ち物点検を行う。 →相互確認 4 毎朝、及び定期的にミーティングを行い、「だれでもマップ」の確認を行い、意識の高揚を図る。 だれでもマップの導入後、誤廃棄事故の減少が確認されました。 また、だれでもマップを参照することで、現場で廃棄か否かを迷うことが少なくなり、効率的に作業が行えるようになったこと。廃棄ミスによるクレームが減少したために、その対応や手直しの手間が減ったこと。など、作業時間の削減効果が得られています。 この時間的余裕をテナントとのコミュニケーション促進や、サービス向上に結びつけて、顧客満足度の向上を実現できるものと考えています。 |
昭和建物管理(株) 『魅せる清掃を求めて-トイレ編-』 トイレ清掃中にお客様がみえたが、清掃中だったので遠慮して立ち去ることがありました。遠慮していただけるのはありがたいものの、お客様に気を使わせるのは問題があると考え、トイレ清掃を効率的に、時間を短縮して行う方法はないかと、研究テーマを選定しました。 トイレブースが汚れる→洗剤でゴシゴシと洗浄する→磨きによって陶器に傷がつく→傷で汚れが付きやすくなる→トイレブースが汚れる……と、このようなループが延々と繰り返され、時間と共に傷と汚れの規模が拡大していくのが「汚れスパイラル」です。 そこで汚れスパイラルから脱却するため、汚れが付いてから洗浄するのではなく、防汚につとめることにしました。 洗浄後にアルタシート(研磨シート)でザラつきがない程度にまで傷取り作業を行い、トイレブース全体にアルファー3(撥水性洗剤)を塗布することで皮膜を形成します。 また、洗面・便器などに防汚効果のある洗剤を週1回使用することにして、他の日は水洗いだけで美観を維持するように、清掃工程を変更しました。 また、拭き工程に使う道具を、タオルからマイクロファイバークロスに変更した結果、従来は「水拭き」と「仕上げ拭き」の2工程だった作業を、「湿り拭き」だけの1工程に縮めることができました。 これらの対策によって、目標であった「汚れスパイラル」から脱却できただけでなく、毎日の作業量を約20%短縮することができ、もうひとつの問題であった「作業員の負担」も軽減することができました。 さらに改善するべく、作業方法の見直しと再評価、スタッフ毎に違う清掃方法の統一と標準化を行いました。 問題と改善例
こうして効率化した作業工程を標準化するために、作業工程表を作成したり、スタッフを集めた勉強会を実施しました。 改善について、経験15年のベテラン作業員からも「身体は楽になったし、清掃箇所もキレイになった。お客様に喜んでもらえる。何より本当のプロ意識を持てるようになりました」と好評を得ています。 |
以上、業務改善事例発表会の内容でした。
こう言うと聞こえが悪いですが、人の話を聞いてマネするだけで改善やサービス向上になるのですから、こういった発表会に積極的に参加して学ぶことも、ひとつの業務改善の実施だと思います。もちろん発表する側も、業界全体のサービス向上策として発表しているのでしょう。