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ビルメンテナンス業務改善事例発表会 -設備・警備の部 /経営・管理の部

ビルメンヒューマンフェア '05 in九州
ビルメンテナンス業務改善事例発表会

設備警備の部
コニックス(株) 『金属ボンドによる腐食穴等の配管補修』
(株)ケントク 『冬場の省エネルギーを図る!! 電気・ガス使用量の削減』
(株)朝日ビルメンテナンス 『ビル共用部電力使用量の削減』
昭和建物管理(株) 『希薄廃水処理装置の処理量低減』
リコー三愛サービス(株) 『警備業務「気づき」改善活動』
近鉄ビルサービス(株) 『津駅前市街地再開発ビルにおける省エネルギー対策』
東洋ビル管理(株) 『7年連続の低減を目指す、設備投資ゼロ円の省エネ対策』

 経営・管理の部
四国管財(株) 『クレームを減らし、ラッキーコールに変える』
(株)ジェイアール西日本メンテック 『お客様に喜ばれるサービスを目指して』

・設備・警備の部

コニックス(株)
『金属ボンドによる腐食穴等の配管補修』

ビル内の配管は、日常では分解整備や交換などのメンテナンスが行われず、漏れなどの問題が生じてから部品交換するのが一般的です。
しかし部品交換には、事前の調査から交換作業まで多くの手間と時間が必要になります。配管全体に、同時多発的に問題が生じているなら、配管一新のリニューアル工事を行うことになりますが、腐食などで部分的に問題が生じた場合にも手間やコストをかけるというのは、ちょっと勿体ない気がします。
部品交換の代替手段には、補強器具で包んだりパッチを充てる方法があります。それぞれ簡単で有効な手段なので、状況によっては、これで対処できますが、これらには補修可能箇所が限定されるという問題があります。要するに、補強器具などは形状が決まっているので、対象が変わると使えないことがあるということです。
そこで金属ボンドでの補修です。

金属ボンドによる補修の利点
・破損個所の場所や形状は限定されない
・肉盛りすることで強度の補強にもなる
・事前の調査が必要ないので即応性がある
・簡単・安価

大まかに以上の利点が挙げられますが、他に部品交換に比べて作業スペースが少なく、狭い場所での作業が可能なことも魅力です。
しかし、いくら有効なようでも、強度や耐久性が不足するのでは話になりません。強度や耐久性は十分なのか? 十分な強度や耐久力を得るには、どうすれば良いのか? それが、この研究のテーマです。

金属ボンドに求められる条件
・電食しない
・強度、耐水、耐油、耐薬品、作業性等が良い
・穴埋め、亀裂等への使用が可能
・低価格

以上を検討した結果、金属ボンドは条件を満たし、作業が実施されました。
実作業においては、金属ボンドのくいつきを良くするために、事前に補修箇所の表面を「適度に粗くする」「脱脂する」「乾燥させる」ことが重要で、これを十分に行わないと失敗や強度不足をまねいてしまいます。また、補修箇所の穴が大きい場合には、真鍮などでパッチを充ててから、金属ボンドで補強します。

金属ボンドによる間接効果
・作業に必要な作業人員・時間の削減。
・部品や工事車両の手配が不用であること。
・作業員が配管専門技術者でなくても良い。
・工具も一般的なもので良いこと。

今後の課題
補修後の耐久性の追求を続けること。
これまで蒸気管、給水管、排水管、消火管、ステンレス水槽の補修を実施。補修箇所の観察を続けているそうです。このなかには補修後5年経過の実績もあり、特に問題は生じていない。

滑らかな面の補修方法の確立。
ステンレス水槽などで、なるべく滑らかになるように施工し、作業後の研磨仕上げなどを行っているが、これについてより良い方法があれば確立したい。

 

(株)ケントク
『冬場の省エネルギーを図る!! 電気・ガス使用量の削減』

発表者の(株)ケントクさんでは、大阪駅近辺の建物について、給排水、空調、事務所レイアウト図面作成までを管理しているそうです。今回はこのビルを対象に、お客様からの要望が高い「電気・ガス使用量の節減」に挑戦しました。
特に冬場は暖房や温水供給などエネルギー消費量が多くなるので、削減は難しい課題です。その一方で、消費量が多いだけに、うまく削減できれば、省エネルギー化の効果も期待できるでしょう。

まずは現状把握と実施内容の検討です。

現状の把握
・空調装置など、運転時間を一旦入力したら、そのまま外気温度を考慮せずに運転していた。
・送風機・配風機の間欠運転をしていなかった。
・冷温水発生器の燃焼状態を考慮していなかった。
・温水の設定温度を固定して、外気温を考慮していなかった。
・ボイラーの運転も冬運転にするだけで、外気温による再検討をしていなかった。

全体的に季節が変わったら設備を「冬の設定」にしただけで、その日毎の外気温設定をしていないことが問題のようです。
そこで機械の運転方法を再確認して、その性能を把握することから省エネ対策が始まりました。機械の性能を確認したら、ビルの在館者数や外気温を確かめつつ、各装置の運転状況や設定を変更することにします。

これまで常に3台稼動していた冷温水発生器を、日中は3台、18時にテナントの社員が退社したら2台、さらに20時以降は1台にする。
以前は6時30から18時まで継続運転していたボイラーは、朝7時まで設定温度で運転して停止。次に9時、12時、14時頃に運転。あとはストレージタンクの温度が42℃を下回るのを確認してから……というように間欠運転にする。
……というように、徹底して「在館者数」と「外気温」を参考にした運転調整を行いました。

さて、単に運転量を減らすことで省エネルギーとするなら、全ての機械を止めてしまえばいいことになります。そうではなく、必要なのは快適さを保ちつつ省エネ化することですから「対策実施中は在館者から室温や給湯に対するクレームが出ていないか?」「それらのクレームは、対策実施によるものか、個人差によるものか?」を検討していく必要があります。
また、これらの対策を標準化するために、模索して得られた運転設定や手順は、一覧表を作成して、運転日誌や操作盤・監視盤に貼りつけておきます。
こういった対策を進めた結果、以下の効果が得られたそうです。

有形効果:2年前と比較して10%のエネルギー消費量削減。
無形効果:メンバー全員が省エネに関心を持つようになった。
波及効果:気楽に意見を述べあい、実践に移せるようになった。

(株)朝日ビルメンテナンス
『ビル共用部電力使用量の削減』

こちらも上記と同じく管理ビルの省エネルギーをテーマにしています。おおよそのポイントも同じく、時間毎の要不要を見極めた、節電を実行しています。
朝日ビルメンテナンスさんの場合、いかに「検討項目を挙げ、実施内容を絞り込んでいったか」という、対策実施前の課程を詳しく紹介したことが、発表内容の特徴だったように思います。

まずは対策についての前提条件です。

対策の前提条件
・照度を落として必要な部分を暗くしたり、避難路の安全を妨げないこと。
・設備投資や過大な費用をかけない。
・美観を損ねない、テナントに迷惑をかけない。
・過大に作業量を増やさず、設備員のできる範囲で行う。
・サービスの質を落とさない。

次にスタッフ全員による対策の立案および最適策の検討が行われました。

対策項目 照明系統
1 白熱灯を電球型蛍光灯に替える。
2 テナント退出後は、速やかに該当するフロアの共用部照明を消灯する。
3 エントランス照明の点灯は屋外の明るさに応じて行う。
4 ベランダ灯、SK室照明の消し忘れに気をつける。
5 監視盤室の照明は、不在時はこまめに消す。
6 トイレ、給湯室は、不在時には照明を消す。
7 テナント退出時間が深夜(24時?)になる時は、車路照明を消す。
8 共用部の照度調整を行う(電球を減らす)。
9 晴天時は車路照明を消灯する。
10 駐車機内の照明を車庫ドアの開閉に連動させ、駐車機内が無人の時は消灯する。

対策項目 動力系統
1 エアコンの設定温度を変更し、省エネする。
2 エアコンの投入時間を削減して設定する。
3 立体駐車場内の給排気ファンは運転時間の短縮。
4 駐車機の電源は、20時以降テナント契約車両が全て入庫したら、オフにする。
5 監視盤室の給排気ファン運転時間を短縮する。
6 ゴミ室の排気ファンは、ゴミが無いときはオフにする。
7 エアコンの運転中に冷気(暖気)が室外へ逃げないように、屋外への扉を開けっ放しにしない。
8 監視盤室のエアコンは、不在時はこまめに消す。
9 給湯器はタイマーによる断続運転とする。
10 給湯器の運転時間を短縮する(早めに切る)
11 給湯器の温度設定を低めに設定する。

以上、考案したアイデアを前記しした前提条件に照らし、設備投資が必要か否か、節電効果の度合いも考慮の上で、メンバーが全員が賛成した物を実施しました。
この取捨選択にあたって、どのような検討が行われたかの例が挙げられています。

例1:白熱球から電球型蛍光灯への変更
・電球型蛍光灯は単価が高いが、消費電力が低く、定格寿命が長い。
・総合すると1年間のランニングコストが約67%の節減になる
以上により、実施を決定。
例2:監視盤室の給排気ファン運転時間の短縮
・無人の状態で長時間排気ファンを停止した場合、CO2の量は安全値を保てるか?
安全を確認したので、実施を決定。
例3:給湯器の運転時間短縮
・日常の給湯器の使用量が多いので非現実的。
以上により、実施項目から削除

以上、様々な検討を行った上で、照明系統の項目より1?5を、動力系統から1と4?8を実施することになり、総合して前年比11.7%ものエネルギー消費量節減を実現できたそうです。

 やはり検討を重ね、無理のない省エネ対策を実施することが大切ですね。無理や負担があっては継続実施できませんし、継続実施できないのでは、本当の省エネ対策にはなりません。

昭和建物管理(株)
『希薄廃水処理装置の処理量低減』

昭和建物管理さんが対策を実施したのは、愛知県内で企業の技術支援などを行っている研究施設で、ここでは希薄廃水処理装置を使用しています。
希薄廃水処理装置とは、研究室から生じる実験廃水に薬品を投入して沈殿させ、上澄みだけを下水道に流すというものです。
対策実施前、この装置には1日850トンもの実験廃水が流入していました。これだけの量を毎日処理し続けるのには、薬品代や装置の稼動エネルギーなどで膨大な経費がかかります。
流入しているのは、本当に処理が必要な廃水なのだろうか?
廃水の流入量を減らすことで経費を削減できないだろうか?
それが研究テーマです。

まずは実験廃水流入量850トンを昼夜で分けてみたところ、昼間(9時?17時)の流入量490トンに対し、夜間(17時?翌朝9時)の流入量が360トンもありました。夜間には研究員が帰宅して実験や器具の洗い物が生じないハズなので、これだけの量が流入するのは不自然です。
そこで、研究員が出勤する前の早朝に、廃水マンホールを開けて調査したところ、5棟ある研究施設のうち4棟からはほとんど流入が無いのにくらべ、残りの1棟(以下A棟)からはコンスタントに流入していることが判りました。以後、調査対象はA棟に絞られます。
次に、A棟を利用している研究員から聞き取り調査を行ったところ、ほとんどの研究員が「夜間連続して流しているものはない」との回答で、研究室からの人為的な原因が否定されました。
そこで、A棟で水を使用しており、しかも機械的に制御されている装置が注目されることになります。スクラバーと呼ばれる廃ガス浄化装置です。

スクラバーは、廃ガスに水のシャワーを吹きつけ、ガス中の汚れを浄化する装置で、当然、それなりの廃水が生じます。
内部には、吹きつけ用の水を貯水するタンクがあり、このタンクの水量はボールタップという装置でコントロールされていました。これは水洗トイレと同様の仕掛けで、プラスチックボールの位置が低く(水深が低く)なると、自動的に給水するというものです。
ただし、水洗トイレに必要以上の水が流れ込んだら、タンクから水が溢れ出してしまうので、誰でも異常に気が付きます。ところがスクラバーの場合、必要以上の水が流入しても、そのまま他の廃水と一緒に流れてしまうので、異常に気がつき難いのです。

スクラバーからの水漏れを確認するため、研究員帰宅後の夜間に7台あるスクラバーの補給水バルブを全て閉じてみたところ、A棟からの廃水流出量が、ほとんどゼロになってしまいました。やはりスクラバーに問題があるようです。
以後、ボールを手で動かしてみたり、プラスチックボールを新品に変えてみたり……と様々な方法で、ボールタップの止水性能をテストしてみると、全てのスクラバーで微量給水(止水性能が不十分で、完全止水せずに微量の水が供給され続けてしまう)が発生していることが判明しました。つまり微量給水で注ぎ込まれた水がタンクから溢れ、そのまま廃水装置に流れ込んでいたのです。
さらに、ボールを新品に変えてみても微量給水が止まらなかったことから、ボールタップのボールを、プラスチック製から青銅製に変更してみました。すると、給水開始から止水までの時間は長くなるものの、微量給水はゼロになることが判りました。
問題はボールの材質そのものだったのです。
ならば、ボールを青銅製に変更すれば、問題は解決できそうです。
しかし、プラスチック製のボールが使われるには、それなりの理由があって、プラスチック製ボールは、青銅製に比べて耐腐食性能が高いのです。そこでスクラバーの内部を調べてみると、幸いなことに廃ガスとボールは直接触れない構造になっていました。

以上の調査結果から、オーナーの許可を得て、スクラバーのボールタップを全て青銅製に交換したところ、廃水装置への流入量は昼間で490トンから300トンに、夜間は360トンから120トンへと大幅に減らすことができました。同時に、薬品代、電気代、水道代も減少し、大きなの経費削減になったということです。

 この事例は、研究施設という特殊な環境での業務改善なので、そのまま余所でも応用が効くものではありません(もちろん、同様の施設に応用すれば即時成果を得ることができるでしょう)。しかし学ぶべきは、それまで機械的に処理していたことに疑問を持ち、調査・改善する姿勢だと思います。

リコー三愛サービス(株) セキュリティグループ
『警備業務「気づき」改善活動』

事の発端は、契約先で警備員の印象についてアンケートを取ったことでした。
警備員は良い印象ですか? 安心して働ける安全な職場ですか?
そういったアンケートから、身だしなみ以外の部分で、警備員の能力や技術面に対して、評価が低いことが判明しました。
この結果を反省して、お客様満足度向上のための業務改善「気づき改善活動」が実施されることになります。

お客様の満足度を向上させるためには、クレームの即時対応などは当然のこと。それ以前の段階で、クレームを予防することが大切です。その内容が些細なことになるほど、お客様がクレームや要望を申し出てくれる割合は減っていき、それが潜在的な満足度の低下につながるからです。
お客様の小さな囁きや小耳にはさんだことは、すぐに改善する。さらに一歩進んで、お客様の立場に立ち、改善すべきところを事前に察知する。つまり「気づく」ことを奨励しました。

まずは事故及び改善報告書に「気づき」の項目を追加して、全国11ののセキュリティーサービスセンターに、改善運動の推進と事例報告を依頼しました。
それから15カ月後までに本部に届けられた「気づき改善件数」は、たったの23件。これでは満足度向上には、程遠い状況です。

そこで「気づき改善」を、もっと積極的に展開するために、それまで改善報告書に間借りしていた「気づき」を独立させ、報告増大のためにキャンペーンを展開しました。

キャンペーン要領
1 改善件数でサービスセンター毎に競争させ、目標を与える。
2 改善内容は問わない(気づいたことは何でも報告させる)。
3 改善件数の多さで表彰する。

さらに「気づき改善とは何かを理解してもらうために、以下の事例を紹介しました。

例1:「気づき」で改善していれば防止できたクレーム
C事業所近隣住民からのクレーム
 3号館西側の公道を歩いていたら、事業所敷地内から水しぶきがかかった。
これは植え込みに設置してある冷却塔のファンから水しぶきが舞ったことによるクレームで、現場は警備の巡回コースであり、気づいて改善していれば防止できた。

例2:「気づき」で実際に改善した事例
A事業所1Fトイレ増築提案
 来館され、トイレを利用される大部分のお客様は、入館時、エレベータに乗られる前に1Fのトイレを利用する。そして退館時、1Fまで下りて来られて1Fのトイレを利用する。
しかし、1Fは男子トイレのみで、大小各1人分しかない。また女性は2Fに行かなければならない。これは事業所の規模を考えると貧弱である。
この警備員の声を聞いた事業部長により、状況は改善された。

ところが、キャンペーンをスタートしたものの、やはり改善件数は延びません。どうやら改善事例の例えが”良すぎた”ようなのです。
そこである事業所からあがってきた「気づき改善」の報告例を、各事業所に開示することにしました。

B事業所の「気づき改善」報告事例
1 路上駐車で来社の車ナンバーと、運転手携帯電話の一覧を作成掲示。
2 入門カードリーダーの下に置いてあった吸い殻入れを移動。
3 ショールーム入口ダウンライト球切れ発見。即設備担当へ交換依頼。
4 入館チェック表保管箱の中で、利用頻度の高い物を別管理。
5 入館チェック表の居室名表示を、見やすい位置に変更。
6 正面ロビーに昭和通から舞い込む銀杏の枯葉を随時処理。
7 9F応接入口天井照明の球切れ。即設備担当へ交換依頼。
8 ショールーム内一部ダウンライトが常時点灯のまま。必要性の有無を確認して消灯。
9 ビル内一部レイアウト変更により、レイアウト図を即改訂。
10 9F第一応接室入口天井照明の球切れ。即設備担当へ交換依頼。

この事例の3、7、10のように、ライトの球切れなどをお客様に指摘される前に報告することも「気づき改善」であることを訴えたところ、以後の報告事例がグンと向上しました。

気づき改善実施の好事例1
問題
深夜、徹夜勤務している社員を居室毎に完全に把握できていない(ビル入出管理システムがあるが、居室単位での入出管理は導入されていない)。
・災害時避難誘導の迅速・的確さに疑問があり心配。
・翌朝、清掃の段取りに影響があるようだった。
改善
お客様の総務センターに了解をいただき「深夜・徹夜勤務届」を作成し、夜間巡回時に記入いただいて、徹夜勤務者の所在を把握できるようにして、清掃員にも情報を提供した。

気づき改善実施の好事例2
問題
管理対象の建物ではフェアが頻繁に行われる。その時、ロビーの各種置物が移動され、フェア終了後にも元の位置になかなか戻されない。
・これでは機能を果たさない上、美観上問題がある。
改善
正規の位置の写真をデジカメで取り、「レイアウトマニュアル」を作成して関係区へ配布した。フェア開催時には事務局へ配布して、使用後、元に戻してもらうことにした。
このレイアウトマニュアルには「看板と壁との隙間は50?60mm」「案内図の板面には光が当たるように」「傘立ての置き位置は壁にあわせる」「イスの脚がカーペットを踏まないように」等、写真に細かく記載する。

以後、
・各拠点の提出状況を一覧表にして、フィードバックする(2回/月)。
・報告書に対して必ずコメントを添える。
・提出されたもの全てに必ず目を通し、押し員をして返却する。
・事例を現任教育時に紹介したり、全拠点に配布し紹介する。
・どんな小さなものでもけなさない。
・各拠点を視察時、自分自身でも気づいたことを伝え、改善策を一緒になって考える。
……など、スタッフのやる気を削がず、本部も一体となって参加する「気づき運動」推進策を継続実施しています。
こういった改善運動によって、お客様からの反応は格段に良くなり、再度のアンケートによる効果確認にも、その成果は顕れたそうです。

 アンケートの結果以上に……
・日々の業務や行動面で色々な発見があり、毎日の行動の振り返りにもなる。
・ちょっと気になった小さな事でも、何とかしようとする意識から、行動に移ってきている。
・入出門時、社員等の方々から挨拶の返事が100%返ってくるようになった。
・自分たちのレベルアップを実感できるようになった。
……等、現場のスタッフの方々が感じていらっしゃる効果にこそ、この運動の成果が顕れているように思います。
管理対象を「単なる管理対象」ではなく、自分自身、そこを職場とする「利用者の1人である」と認識できれば、いろいろと気づくこと、積極的に改善したくなることが見えてくるのかもしれません。
この報告は現場に常駐する警備員さんの事例ですが、複数の現場を受け持つメンテナンススタッフの方でも、現場で「あれ?」と思ったことは積極的に進言してみるようにしてはいかがでしょう?

近鉄ビルサービス(株) 中部支店三重事務所
『津駅前市街地再開発ビルにおける省エネルギー対策』

改善の舞台となったのは、ショッピングモール、公益施設、オフィス、ホテルが入った複合業務用ビルで、空調には「エコアイス」が用いられていました。エコアイスとは氷蓄熱式空調システムのことで、夜間電力で氷を作り、その氷を熱源にすることで、昼間電力の消費量を減らすというものです。
しかし改善前は、いかにエコアイスを用いても、業務用ビルの空調電力消費量は膨大で、とても追いつきません。夏の昼間、冷房が最大負荷になる時間帯には冷凍装置の追従運転が必要になるので、どうしても契約電力を大きくせざるを得ませんでした。
その一方、ショッピングモールやオフィスが就業時間を過ぎると、空調を必要とするのはホテルだけになるので、電力の負荷は軽くなっています。
そこで、空調システムの運転方法をみなおすことで、消費電力の低減を目指すことになり、日常運転の記録を基に、各種装置のメーカーと打ち合わせを行いながら省エネ運転の計画を立てました。

まずは氷蓄熱式空調システムの運転方法の見直しです。
 昼間と夜間の電力消費量に差があることから、夜間の冷凍装置の運転時間を延長して、より多くの氷を作ることにしました。つまり昼間ピーク時にあたる電力消費を、夜間にシフトしたのです。電力消費そのものは無くなりませんが、これで昼間の追従運転が必要なくなり、契約電力を下げることができます。
次に、冷却水ポンプの運転方法を変更します。
冷却ポンプの吐出側バブルは、水量調整のため1/2に絞られていましたが、そのためにエネルギー損失が発生していました。これを全開運転にして損失を減らした上で、冷却水ポンプの配管にインバータ設備を導入して、運転電力の削減を目指しました。
ここで設備導入にあたっては高調波の発生がほとんどないPWM式を採用して、環境に配慮しました。また、温度センサーを設置して、冷却水ポンプの運転制御を冷水温度を基にコントロールするようにしたところ、制御装置の構成をシンプルにできただけでなく、予想以上の省エネ効果を得られたそうです。
もうひとつ、吸収式冷温水発生機冷水出口温度の見直しを行い、8℃?10℃の範囲で、季節により変更することにして、電力・ガスの消費量削減を目指しました。

こういった改善策を3年かけて実施した結果、契約電力の低減、電力使用量の削減、水道使用量削減、都市ガス使用量の削減という効果が得られました。インバータ設備など導入したために、ある程度の投資が必要になりましたが、省エネ化によって投資金額の1.5倍ほどの経費削減を実現しているそうです。

東洋ビル管理(株)
『7年連続の低減を目指す、設備投資ゼロ円の省エネ対策』

管理対象物件が公営施設であるために、設備投資による対策を実施できない状況でありながら、過去6年連続でエネルギー消費量を削減し続けているそうです。今年で7年連続の削減達成(成見込み)となる改善対策について、発表してくださいました。
管理物件は図書館なので床面積が広く省エネするには不利な改善対象です。この図書館に常勤スタッフが2名だけで、いっさい予算をかけない省エネ策を発案・実施し続けているそうです。

これまでに実施してきた運用改善対策
1 冷温水循環ポンプのインバータ最低周波数設定変更
2 冷温水流量
3 冷温水二次側出口温度
4 空調機ダンパー
5 外気エンタルピ
6 外気を導入する場所を選ぶ
7 空調機の運転開始時間
8 空調機のPID制御
9 室内への給気量調整
10 排気ファンの運転時間
11 不使用室の暖房で温熱デマンド対策
12 映像ホール地下保温対策
13 加湿冷房
14 排気ファンを運転せずに排気をする
15 ファンコイルのロック
16 夏季前にパッケージエアコン室外機を、高圧洗浄機にて洗浄する
17 4階書庫換気方法
18 4階集密書庫換気ダクト
19 学習室のファンコイルと机
20 空調吸気口
21 40w蛍光管400本の取り外し
22 ブラケット器具
23 吹き抜け300wハロゲン球天井灯
24 照明制御盤
25 レストラン
26 不快指数冷房
27 配管蓄熱
28 風除室自動ドア

以上のリストのうち、発表会では1、13,26について説明がありました。

1:冷却水循環ポンプインバータ最低周波数を18Hzに変更

30kwの循環ポンプが3台あるが、夜間の負荷が少ない時間帯になると、往ヘッダの圧力が上がり、バイパス弁を通して水が循環ポンプの中を回っているだけになっていた。
これではポンプの電力を消費しつつ、ただ無駄に水が循環しているだけ。そのうえポンプの運動熱によって冷却水が温められている有り様でした。
そこでバイパス弁が開かず、かつ機能に問題が生じないように監視しながらインバータの周波数を1Hzずつ下げていき、2年間かけて18Hzという数値に到達しました。
それから1年の60%を18Hzで運転しているが、7年間問題は発生せず、1ヶ月に10000kwhの省エネ効果を得ています。
13:加湿冷房

本来は暖房時に使用する加湿装置を、中間期や冷房機に使用します。
加湿ノズルにより噴霧を行うと、外気が乾燥しているほど水が蒸発します。この時、気化熱によって空調機の吸気温度が5℃下がることもあります。施設は窓を開けることができないので11月になっても冷房をいれていることがあるが、この加湿散布と外気冷房を併用することで省エネにも役立っています。
26:不快指数冷房

空調装置の運転温度を、不快指数を基準に設定します。
この省エネ対策は、下のふたつの考え方が基になっています。
・館内のエンタルピ(空気のもつエネルギー量)が同じであれば、冷熱使用量は同じである。
・同じ冷熱使用量ならば、湿度が高い方が不快指数は低くなる。

 横軸に湿度(%)、縦軸に温度(℃)を取って図示すると、エンタルピ12.6kclのラインは「湿度40%、温度28℃」から「湿度60%、温度24℃」を結ぶラインを描きます。つまり、前者は空調が除湿能力重視で冷房は抑え気味。後者は除湿能力を下げた代わりに冷房が強く効いていることになります。また、このラインより下にいくと空調のエネルギー消費が多くなったことになり、上になると消費が少なくなったことになります。
ここで同じ図に不快指数のラインを重ねます。「湿度40%、温度28℃」の不快指数は74で、当然、このラインよりも低くなると「より快適」であることを意味します。
そこで少しだけ現状よりも快適さを求めて、不快指数73のラインをひいてみました。このラインを基準に湿度を高めに「不快指数73、湿度60%、温度25.2℃」に空調を設定すると、そのエンタルピは元のラインより上に位置することになり、「不快指数74、湿度40%、温度28℃」の現状に比べて、快適さと省エネを両立したことになります。

直近1年間の平成10年比低減率
エネルギー使用量 31%低減
CO2排出量 35.2%低減
光熱費 43%低減

平成10年からの7年間で得られた成果は、以上のようになります。熱の省エネルギー化を重視した結果、エネルギー使用量よりもCO2排出量節減において、より効果が得られているそうです。
いずれにしても、これだけの成果を得るには個々の省エネ対策だけでは不可能です。さらに削減効果をあげていくには、これまでに実施された省エネ対策を継続しつつ、毎年新しい省エネ策を考案し、実施していかなければなりません。
これからも2名のスタッフで通常業務を行いつつ、さらなる省エネルギー化を推進していくとのことでした。


●経営・管理の部

四国管財(株)
『クレームを減らし、ラッキーコールに変える』

こちらの発表では、まず「ケーキを買って腐っていたら、お店に文句を言ってくるのは100人のうち何人か?」という例題から、クレームに対する考え方について説明がありました。
先の例題の答え、日本人では「1人」だそうです。
しかし、この1人の後ろには、他に99人もの人が不満を抱えたまま、その不満を店には伝えてくれていないことになります。その99人が、友人など7人に不満だったと愚痴を言うと、99×7=693人に悪評が広がることになります。
一方で、発生してしまった問題に対して、誠心誠意対応することができて、それが良かったと1人につき4人に好印象を伝えてくれれば、99×4=396人に良い噂を広めてもらえることになります。
これが四国管財さんのクレームに対する考え方の基になっているそうです。
誠心誠意対応することでクレームを宝に変える。
クレームは隠れた問題を改善するチャンスになる。
つまり「クレーム = 宝の山」である。
そこで、クレームを総称して「ラッキーコール」と呼んでいるのです。

もうひとつ四国管財さんが行っているのが、組織の単純化です。
会社には役職が「お客様係」と「その他のスタッフ」とに二分され、報連相(報告・連絡・相談)が密に行え、代表者と同じ価値観を持った者を「お客様係」としています。お客様係の価値観は同じなのだから、クレームが発生した時には、誰でもいいから、お客様係に判断を委ねてしまえば良い。こうしてクレームへの対応を素早く行えるようにしました。

もしもラッキーコール(クレーム)が発生した場合、現場でラッキーコールを受けたスタッフは、5分以内にお客様係へ連絡します。
ラッキーコール発生の報を受けたお客様係は、3分以内に対応を決定し、即座に現場に参上して、お客様に謝罪と対応を行います。このラッキーコール受信から現場到着まで、最も遠いクライアントまでの移動が2時間半であることから、2時間半以内の対応を実践しています。
また、お客様係は発生したラッキーコールの内容を即座に記録すると共に、関係者への報告を行って素早く情報を共有化します。この素早い情報の共有化のためには、ボイスメール(録音音声を複数の指定メンバーに同時配信する。声で記録するので入力作業が早く、口調によって感情面の情報も伝えられる)やメーリングリスト(登録者全員にメールを配信する)を活用しています。
さらに問題解決後も、発生した全てのラッキーコールについて、内容をスタッフ研修会で報告したり社内報に掲載して、広く開示することで、スタッフに対しては同じ様なクレームを起こさないよう注意を促し、お客様には誠意ある対応姿勢をアピールしています。

ラッキーコールが発生するのは、それを起こした本人ではなく、そうなった仕組みに問題があると考え、発生したラッキーコールについては「ラッキーコールを起こした事じたいを咎めることは絶対にないので、とにかくスピーディに報告して欲しい」と、スタッフ研修会などで報連相の大切さを徹底して通達しています。
その一方で、もしもラッキーコールの報連相を怠っていたことが発覚した場合は、厳しく処罰するとしています。

どんな小さなことでも良いから報告するように……と、報連相の大切さを徹底した結果、過去には年に5件しか報告されていなかったラッキーコールが、2004年度には344件を計上するようになり、その対応の素早さと細やかさで、お客様の好評を得ています。

(株)ジェイアール西日本メンテック
『お客様に喜ばれるサービスを目指して』

事業改善のためにプロジェクトチームが誕生したのは2004年の2月。発表者のジェイアール西日本メンテックさんは、事業開始からの11年間、大きな問題を抱えていました。
スタッフが従来の方法に固執して効率を上げられなかったこと。変化を求めても対応できない体質。変化できないことへの危機意識の無さ。結果として訪れる競争力の無さと企業の魅力低下。そして質と数共に慢性的な人材不足。これら全ての根本に、歴代マネージャーの我流による運営がありました。

ある新人スタッフが研修を終えて、現場でのトレーニングを開始しました。その数日後、この新人に意見を訊いてみると「現場に迎え入れる意識がない。暖かみがない」「トレーナーが変わると教わる内容も変わるので、何が正しいか分からない」「休憩中、声をかけられることもなく、不安」「トレーニングの概要が説明されないため、目的が理解できず不安」「会社のレベルに疑問を感じた」と、評価は厳しく、特にトレーナーの意識や認識に問題があるようでした。
それまでは単に「経験年数が長いだけの人」をトレーナーと認識していたことを反省。業務改善開始後は、学び続ける姿勢、教える情熱、そしてコミュニケーション能力が優れている、等の要素がトレーナーには必要であると考え、以降、スタッフ育成セミナーなどの改善策をもって、マネージャー・リーダー・トレーナーの育成を実施しています。

一方で、過去に場当たり的なスタッフ募集(紙媒体、ネット媒体を問わず)を続けた結果、募集にかかる費用が年々膨張を続けていました。これを憂慮して、2005年の2月にはネット媒体に絞って募集をかけてみたところ、募集費用は紙媒体の1/3に抑えられ、一方で応募者は2.2倍となりました。
また、求人誌から同業他社のデータと比較したり、募集を行った際に、応募者に対してアンケートを行って、応募者の求めているものや意識について調査するようにしています。

その他に、無駄な作業時間を改善するために「勤務シフトソフト」「月刊データソフト」を開発しました。
データソフトに蓄積した情報から、汚れやすい箇所を特定して効率よく作業を行ったり、作業の重複を避けたり、現場の成果を見える形にして、スタッフのやりがいにつなげるようにしています。
こういった効率化によって、作業時間が月刊平均30時間から5時間へと84%もの大幅縮小を実現しました。


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