18年度 第6回こころみの会 『ワックスの剥離廃液処理』
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講義2 日本整油株式会社 『産業廃棄物業者から見た廃液の処理方法』 日本整油株式会社様の講義は、会社案内のビデオ上映と会社設備の紹介によって、廃棄物の焼却処理設備とリサイクル設備(溶融炉・発電施設)を周知することから始まりました。続いて、専門業者から見た産業廃棄物についての解説があり、後半は質疑応答に時間が割かれました。 質疑応答においては、会場のビルメンテナンス事業者が最も関心を寄せる「排出者として、具体的に何をどうすれば良いのか?」という点が問われました。 特に処理費用については、処理作業そのものより廃液を運搬するためのコストが大半を占めるため、いかに運搬費用を節約するかが注目されました。 剥離廃液と下水道法 まず前提として、下水道法において流すことのできる汚水の許容限度の値と、一般的な剥離廃液、一般的な洗剤廃液の値は以下のようになり、いずれの値も、特にBOD(生物化学的酸素要求量)においては大きな隔たりがあるため、そのまま剥離廃液を下水に流すことはできません。 また、下記の廃棄物の種類に照らし、剥離廃液は事業活動によって生じた固体または液状物質にあたるため、産業廃棄物として扱うことになります。
産業廃棄物の排出責任者 産業廃棄物を廃棄する上での責任(排出者責任)の所在について、川崎市の見解では以下のようになっています。
産業廃棄物の許可と罰則 産業廃棄物の処理は、排出事業者が自らの責任で、許可者に委託して行うことになります。 ここで運搬処理を受諾する許可者には、廃棄物を収集運搬するにあたっては収集運搬業務の、処理作業をするにあたっては処理処分業務の、それぞれの許可を市や県から受けていることが必須条件です。 許可のない運搬や処理は違法で、不法投棄においては、5年以下の懲役または一千万円以下の罰金などの重い刑罰が科せられることになります。 廃棄方法 これ以下の部分については、講義の内容と質疑応答の際に挙がった回答で、内容が重複したり前後したりすることがあるので、それぞれを交えた要旨を記載します。 廃棄契約 廃棄物の成分が解らない最初の取引の場合、実際の契約前に廃液のサンプルとWDS(廃棄物安全データシート)が必要になります。 サンプルは300~500cc(ペットボトル一本分)くらいの量で、この分析結果から、業務の許可範囲内で処理を受諾できるか否かを判断し、可能であればコストはいくらか……といったことが算出されることになります。 WDSには実に数多くの記載項目があります。本来、WDSと製品のMSDS(製品安全データシート)は別物と考えるべきですが、特に爆発などの危険を伴わない剥離廃液においては、理論的に「剥離廃液はワックスと剥離剤の混合物である」と考えて、双方のMSDSを参照してWDSを記入すれば良いでしょう。 具体的な廃棄方法には、以下の3種が挙げられます。 ・処理業者が収集する ・収集運搬業者に委託 ・廃棄者が直接処理場へ持ち込む ・処理業者が収集する 廃棄物処理業者が運搬業務も行っている場合、排出事業者と処理業者との間で契約を交わせば良いことになります。 日本整油では収集運搬業も行っているそうですが、これについては後述します。 ・収集運搬業者に委託 この場合、排出事業者は、収集運搬業者と処理業者、各々と委託契約を結ぶことになります(二社間契約)。 産業廃棄物を委託する場合は、委託者が排出する産業廃棄物に、マニフェスト伝票を必ず添付しなければなりません。 マニフェスト伝票とは「いつ、誰が、どこから、どのような物を、どれくらいの量、どの業者が運び、どこで処理するか」を全て伝票の上で管理できる書類で、マニフェスト伝票を使わない廃棄物の委託・受託は違法になります。 ・廃棄者が直接処分場へ持ち込む ビルメン業者が、現場で回収した廃液を自社に持ち込む行為は、産業廃棄物の収集運搬行為にあたりません。この場合、剥離廃液は自社物であるとされます。 また、排出事業者が、剥離廃液(自社物)を、自社の資産である車で処理業者まで運ぶ場合は、これも収集運搬の行為にはあたらず、運搬業務の許可が無くても違法にはなりません。 この場合は、処理業者と、処理処分の契約だけをすれば良いことになります。 また、直接持ち込む場合には、ペール缶1缶からでも受け付けることができます。 以下、質疑応答にでた補足事項を列挙します。 ・具体的にビルメン業者が負担するコストについて 処理費用: サンプルの分析結果が出るまで一概には言えません。 あくまで一例として キロあたり50円ほど。 その他、わずかに前処理費用など別途かかりますが、それが大きな割合をは占めることはありません。 運搬費用: 回収量や頻度にもよるので一概に言えません。 あくまで一例として、神奈川県内の一業者でドラム缶10~15本の場合、4万~5万円ほど。 会社の見解としては、あまり少量でも効率が悪いので、一度の回収でドラム缶10本くらいは運びたい。 複数の企業で同日に回収を指定されれば、一社あたりのコストは下げることができるかもしれません。 ・どういう状態にして渡せばよいか? 会社でも作業現場でも、収集運搬者の資格で回収に行くことができます。 ・複数の現場から集めた、混合物になっている場合のサンプルは? 処理場に持ち込まれる状態のものが処理対象になるので、サンプルは混合された状態のものを提供してください。 ・ある程度の量が溜まるまで蓄積する場合、廃液を保管する条件は? 消防法に抵触する危険物でなければ、外部に流出させないことだけが条件です。 腐敗や悪臭などが生じる可能性はありますが、その点が管理できるならば他の制限はありません。 ・複数の業者で保管場所を定めて、廃液を集める行為は? 法的に問題はありません。 組合などを作って、その組合が排出者としてマニフェストを作成することになるでしょう。 ・資材屋が資材搬入の帰りに回収できないか? その資材屋が、廃棄物運搬業の許可を得れば可能になるが、現状はそうなってはいません。 参考: 日本整油株式会社 |
講義3 株式会社タムラテコ 『オゾンによる排水の浄化』 オゾンと紫外線を利用した商品を扱っている株式会社タムラテコ様の発表は、講義というよりも、オゾンを利用した廃液処理商品を開発するための公聴会という趣でした。 ビルメン業者が廃液処理で困っているというので、試しにオゾン生成装置で剥離廃液をエアレーション(廃液中にブクブクとオゾンを放出)してみたところ、以下のような結果が得られたそうです。
オゾンでエアレーションすることでBODの低下などが見られた、という上記の結果を踏まえて、ビルメン企業でオゾン生成装置をどのように利用できるか? どのくらいの量を、どのくらいの時間で処理できれば使い易いか? といったディスカッションが行われました。 その場で交わされた意見が、実際の現場で使い易い専用製品の開発につながるのでしょう。 写真は当日持参されていたオゾン水生成装置 参考: 株式会社タムラテコ |