掃除機カタログの見分け方
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掃除機カタログの見分け方
著 木村光成 さん
以前、電位安全法の裏について解説した。
電気安全法は感電しないための法律であり、性能に偽装があっても問題にしない。むしろ「動かなければ安全だ」という役人の縦割り行政の典型である。
その上に、測定記録や測定器がなくとも、ほとんど罰則がない。以前の電気用品取締り法より、はるかに緩やかになった。しかし、感電により死亡事故が起きたとしたら、1億円以下の罰金が待っている。
今までより自由にやってよい。しかし、事故の責任は取らせる。という恐ろしい法律である。
その結果、ビルメン業界には性能偽装商品が存在するという結果を生んでいる。
我々が今問題にしているのは『性能の低い掃除機は清掃の質を落とし、クレームの要因になる』という事柄を防止することにある。すなわち、性能の良い掃除機を選ぶということである。
現在は偽装の時代といわれている。掃除機には、食品のように偽装に対して厳しい罰則はない。また、消費電力1KW以上は一応業務用機として、表示の義務がない。
当然、ビルメン業界で販売されている掃除機に偽装がないわけがない。1970年代には、性能はカタログの1/2という機種もあった 。国民生活センターの掃除機性能テストなどの影響で、あまりに酷いものは少なくなっている。しかし、使用中のものは手入れが悪いと、カタログの1/3以にまで性能が低下している機種もあり、その原因は「構造上性能の低下が起きやすい」などということもある。性能の低下しやすさの測定法も開発してある。
カタログの偽装を見破るには
掃除機の偽装を見抜くには、測定器がなければ……というのが普通の考えである。しかし、最小限の測定で可能であり、この手法を述べる。
まず、性能がずば抜けて良いものは、おかしいということである。
通常、掃除機はビルメン業界の表示には以下のものがある。
1:消費電力 [w]
2:電圧 [100v]
3:吸引力 水柱[㎜]
次に、標準の掃除機を決めておく。たとえば日立、ナショナルなどのポット型は、1960年代から業務用として使用されてきた。また、ハウスダスト研究者の横浜衛生研究所の大島司郎博士も、論文の中でナショナル掃除機を使用して、その吸引力を『1,600mm水柱』と記載している。
筆者らは60年代から日立100Sを校正標準機として使用している。当時は吸引力1600mmであったが、現在は2000㎜が標準である。
校正標準機としての使用法は、その現場で2,000㎜の吸引力があれば、標準の電圧があるということである。そこで、その他の掃除機を測定してカタログと比較して、それより低ければ数値偽装がある可能性が高い。もちろん整備不良の可能性もある。
まず水柱2000㎜というのが、ほぼわが国の標準と考えてよい。
これを前提に、2機種のカタログ数値を比較する。2つまたは3つの数値比較から偽装が推測できる。
カタログから偽装を見抜く
まず、最大級引力を測定する。次に、その場所の電圧を測る。そして100vであれば、カタログと比較できる。現場電圧は通常100v以下が多いが、まれに115vの場合もある。
霞ヶ関ビルのオープン時、電圧が90vの場所が多く、外国機の故障が続出した。
電圧はテスターで計れるが、あまり安いもの、1000円以下は好ましくない。
クランプメーターがあれば電流を測れ、電圧×電流=ワット の概略が測定でき、電気安全法違反がわかる。この2つの測定器は、設備には必ず常備している。日立やナショナルを標準にしておけば、吸引力の低下から現場電圧も推測できる。
現場における掃除機の性能低下
ほとんどの現場では電圧低下が認められる。
神奈川ビルメンでの研究で、現場の測定例を示す。筆者が吸引力測定器を貸し出し、測定を行った。
掃除機性能測定に対する圧力
これは20年前からであり、特に東京資材商組合の反対が多い。 しかし、現在はこれを禁止する時代ではない。これが神奈川ビルメン協会の一部有志による研究発表であろう。
ビルメン協会も、この研究に予算を出さないなどの圧力をかける時代ではない。
掃除機カタログの見分け方
著 木村光成 さん
以前、電位安全法の裏について解説した。
電気安全法は感電しないための法律であり、性能に偽装があっても問題にしない。むしろ「動かなければ安全だ」という役人の縦割り行政の典型である。
その上に、測定記録や測定器がなくとも、ほとんど罰則がない。以前の電気用品取締り法より、はるかに緩やかになった。しかし、感電により死亡事故が起きたとしたら、1億円以下の罰金が待っている。
今までより自由にやってよい。しかし、事故の責任は取らせる。という恐ろしい法律である。
その結果、ビルメン業界には性能偽装商品が存在するという結果を生んでいる。
我々が今問題にしているのは『性能の低い掃除機は清掃の質を落とし、クレームの要因になる』という事柄を防止することにある。すなわち、性能の良い掃除機を選ぶということである。
現在は偽装の時代といわれている。掃除機には、食品のように偽装に対して厳しい罰則はない。また、消費電力1KW以上は一応業務用機として、表示の義務がない。
当然、ビルメン業界で販売されている掃除機に偽装がないわけがない。1970年代には、性能はカタログの1/2という機種もあった 。国民生活センターの掃除機性能テストなどの影響で、あまりに酷いものは少なくなっている。しかし、使用中のものは手入れが悪いと、カタログの1/3以にまで性能が低下している機種もあり、その原因は「構造上性能の低下が起きやすい」などということもある。性能の低下しやすさの測定法も開発してある。
カタログの偽装を見破るには
掃除機の偽装を見抜くには、測定器がなければ……というのが普通の考えである。しかし、最小限の測定で可能であり、この手法を述べる。
まず、性能がずば抜けて良いものは、おかしいということである。
通常、掃除機はビルメン業界の表示には以下のものがある。
1:消費電力 [w]
2:電圧 [100v]
3:吸引力 水柱[㎜]
次に、標準の掃除機を決めておく。たとえば日立、ナショナルなどのポット型は、1960年代から業務用として使用されてきた。また、ハウスダスト研究者の横浜衛生研究所の大島司郎博士も、論文の中でナショナル掃除機を使用して、その吸引力を『1,600mm水柱』と記載している。
筆者らは60年代から日立100Sを校正標準機として使用している。当時は吸引力1600mmであったが、現在は2000㎜が標準である。
校正標準機としての使用法は、その現場で2,000㎜の吸引力があれば、標準の電圧があるということである。そこで、その他の掃除機を測定してカタログと比較して、それより低ければ数値偽装がある可能性が高い。もちろん整備不良の可能性もある。
まず水柱2000㎜というのが、ほぼわが国の標準と考えてよい。
これを前提に、2機種のカタログ数値を比較する。2つまたは3つの数値比較から偽装が推測できる。
カタログから偽装を見抜く
まず、最大級引力を測定する。次に、その場所の電圧を測る。そして100vであれば、カタログと比較できる。現場電圧は通常100v以下が多いが、まれに115vの場合もある。
霞ヶ関ビルのオープン時、電圧が90vの場所が多く、外国機の故障が続出した。
電圧はテスターで計れるが、あまり安いもの、1000円以下は好ましくない。
クランプメーターがあれば電流を測れ、電圧×電流=ワット の概略が測定でき、電気安全法違反がわかる。この2つの測定器は、設備には必ず常備している。日立やナショナルを標準にしておけば、吸引力の低下から現場電圧も推測できる。
カタログ性能の簡易確認法 | ||||
機種 | カタログ数値 | 日立カタログに表示なし 100V吸引力 電圧を確認、吸引力を測る |
風量 | 吸い込み仕事率 |
日立96-H 電圧100v時 |
1050w |
2100mm |
350w |
|
A機種カタログ数値 |
1300w |
2500mm |
200立法メートル |
表示なし |
現場実測 電圧100v確認 |
1800mm |
|||
注: フィルターのつまりがあると、まず風量が低下し、次に吸引力が下がる。 運転音を下げると、吸引力と風量が下がる(性能が下がる)。設計上音を静かにするため性能を落としている場合もある。また、性能を上げると耐久性が短くなる場合もある。 最も多いものは、外国の120vの測定値を記載したものや、フイルターなしの数値を表示した例が多い。 |
現場における掃除機の性能低下
ほとんどの現場では電圧低下が認められる。
神奈川ビルメンでの研究で、現場の測定例を示す。筆者が吸引力測定器を貸し出し、測定を行った。
現場掃除機測定07年 10月 | ||||
機種名 | 形式 | 最大吸引力 | 最大吸引力 | 消費電力 電流×電圧で簡易測定 |
自社現場測定、電圧無調整、 吸引力測定器による。 |
ジョンソンフロアラボ、100vに調整 通常115vで電圧は高いため、日立製が2400mm水柱を示す。通常は2000mm |
|||
機種 | 形式 | 水柱[mm] | 水柱[mm] | 電力[w] |
日立 CV-96H | ポット |
2100 |
2100 |
950 |
コンドル CVC-203 | ポット |
1700 |
||
リンレイ 370 標準 |
ポット |
2100 |
2300/1900/1400 |
1000/910/720 |
リンレイ 370 静音 |
ポット |
1200 |
||
日立 MG-G100 | ポット |
2100 |
||
東芝 VC-G100 | ポット |
2450 |
||
ジョンテックコードレス | ポット充電 |
900 |
||
ニルフィクス GD910 | ポット |
1500 |
||
ニルフィクス GD110 | ポット |
2100 |
||
ニルフィクス UZ964 | 腰巻式 |
1200 |
||
マキタ充電クリーナー | ハンド型 |
100 |
||
J-スマート | ポット |
2400 |
2000 |
840 |
J-センサー | アップライト |
1300 |
1000 |
850 |
ナショナル MC-G660W | ウエット |
2200 |
掃除機性能測定に対する圧力
これは20年前からであり、特に東京資材商組合の反対が多い。 しかし、現在はこれを禁止する時代ではない。これが神奈川ビルメン協会の一部有志による研究発表であろう。
ビルメン協会も、この研究に予算を出さないなどの圧力をかける時代ではない。