手あれ、皮膚障害、手袋のかぶれの増加と原因
メンテナンス情報
手あれ、皮膚障害、手袋のかぶれの増加と原因
著 木村光成 先生
業界紙『ビルクリーニング』で、現場の手あれ問題が取り上げられている。
ビルメン業界50年の歴史で、初めてのことである。
建前上、ビルメンでは手あれは存在しないことになっていて、実質上のタブーであった。これを打ち破ることは画期的なことであり、現場にとって大きな福音である。
1:手あれの現状
最近になって現場から、手あれ、皮膚障害、手袋のかぶれの相談が増えている。
この問題について、特に軽度な手あれについては、ビルメン業界では過去に取り挙げられたことはない。『手あれまで労災に含められてはたまらない』との考えが業界にあり、建前上、ビルメン業界に手あれは存在しないことになっている。
しかし、手あれはアトピーの前触れとなる場合もあり、現場において最も数の多い、深刻な労災といえる。
国民生活センターには『カーぺットをクリーニングした後、家族全員の足がかぶれた』という相談もあり、特にハウスクリーニングについては、残留洗剤の問題とも関連する大きな問題である。
これについては、30年前、インテリアクリーニング協会の林先生の意見で、洗剤と手あれの研究を全国ビルメンメンテナンス協会に提案した経緯がある。しかし、当時は前記の理由で取り挙げられなかった。また、資材商組合からも強い反対があり、手あれを起こすのは『現場が手袋をしないのが原因である』として、手あれの原因は洗剤にはないとの見解であった。
しかし、これは現場を知らない人の見解であり、手袋によるかぶれの増加もあり、一ヶ月でも下請現場に入れば、現場が手袋をしない理由が理解できる。
とにかく手あれの出ない、素手で使用でき、こすらないでも良く落ちる洗剤が、現場では昔から要望されている。
しかし、これに反して、家庭用とは逆に下請現場では、建前とは別に、多くの危険な洗剤が使用されているのが現実である。苛性ソーダ、酸性フッ化アンモニウム、高濃度過酸化水素、などである。
これ等を含む洗剤は、むしろ劇物であり、皮膚の影響は手あれではなく、火傷や皮膚の壊死などの皮膚障害である。しかも、使用上の注意が余りに少なすぎる。
写真:石材用しみぬき剤による皮膚障害、高濃度過酸化水素
2:現場から見た手あれの原因
手あれについては皮膚科の医療部門で多くの研究があるが、ここではビルメンの立場で考えてみたい。
なぜ手あれが出るのだろうか。その理由は、我々人類は海から生まれてきたということにある。我々の血液が海水の組成に近いということも、それを裏付けている。
我々の皮膚は、水に対して耐性がある。そして、それは油により得られている。皮膚の表面には皮脂線があり、常に油を皮膚に補給している。その油を洗剤が取り去るため、皮膚が耐性を失う状態が手あれの原因と、我々現場は認識している。
もともと自然界に存在しない界面活性剤や溶剤に対し、我々の皮膚は対応できない。そのため、界面活性剤や溶剤は、皮膚から体内に浸透してゆく。塗り薬は油に薬品を溶解してあるため、皮膚を通して薬品が体内に入り込む、ひとつの手段である。
通常、油は我々の消化器官で消化酵素の力で乳化分解されて、体内に取り込まれる。このように考えると、消化酵素は一種の洗剤ともいえる。皮膚を通して自由に体内に入れる溶剤に有毒物が溶けていたら、または、その溶剤に毒性があったら、人体は大きな損傷を受ける。これに対し、水溶性の毒物は飲まない限り、比較的体に害はない。
手あれは、皮膚の脂分を界面活性剤や溶剤が取り去ることによって起きる。石鹸でこの害が少ない理由は、ある程度の汚れ(油分)を落とすと効果がなくなるからである。言い替えれば、石鹸はすぐ落ちなくなるという欠点を持っているということでもある。これは、特に洗浄効果を求めるビルメン現場では、受け入れにくい欠点である。
3:手あれの増加の原因(中性は安全、安全ラベルは正確であるという神話)
手あれは人によってまちまちであり、手あれの起きやすい人と起きにくい人がある。
しかも、ビルメン現場で使用される洗剤類は、家庭用と異なり、強力なものが多い。当然、手あれは多いはずであるが、関連協会で今まで取り挙げられなかった理由は、現場の声や実情が汲みあげられないことと、現場に手あれや皮膚障害情報が届かないからである。特に下請孫受けの場合や、ハウスクリーニングでは、危険な洗剤が多く使用されている所ほど、これ等の情報が届かない。
情報は販売業者を通した情報に限られる。販売業者が販売のマイナス要因である手あれについて話すわけがない。
ところが、最近、手あれや皮膚障害、発疹などが増加しているとの声が、現場から聞こえてくる。
その原因には、以下のことが推測される。
4:最も有効なパッチテスト
最も有効な肌あれや皮膚障害などの検査は、パッチテストである。
これは1センチ程度の円形ろ紙に、薄めた洗剤をしみこませて、腕の内側などに貼り付け、一定時間後に皮膚の変化を確認する方法である。頭髪染色液の説明書に記載されているから、参考にされたい。ビルメン業界では、ぜひ必要な研究である。
肌あれ、皮膚障害、アトピーなどは個人差が大きく、原因物質も特定しがたい。そのうえ、手袋に対するアレルギーも存在するため、ゴムや布を対象にしたパッチテストも必要である。ゴム手袋アレルギーには、全身蕁麻疹などの重篤な症例もある。
ビルメン業界内部でこのテストを行っておけば、現場クリーンクルーの肌あれなどに対する原因物質の特定と対策が立案できる。
協会指導講師が皮膚科に聞けばよいと説明するが、医療関係者といえどもデータがなければ予防も対策も不可能であり、過去50年間、この問題を避けてきたために現場データは少ない。
まず、業界が取り組みを行わなけれならない時期に来ている。『皮膚障害等製品生体障害事故解析技術の開発』という解説でも、データー集積の必要性を述べている。
30年前に現場の人たちが取り組んだ事例を以下に示す。
このような表にしておけば、後で反応洗剤を絞り込み、特定物質を決定できる。30年前に横浜キョーエイの現場で実施したが、資材業者の反対で発表できなかった
5:化学繊維製品と研磨剤による皮膚変化
その他に、手あれに関連すると考えられるものに、ナイロンタオル、研磨材入りスポンジ、メラミンスポンジ、ポリエステルタオルがある。これ等は綿やレーヨンなどと違い、水分を吸収しないことと、はるかに硬さがある。
最も硬いメラミンスポンジは大理石を削り取り、ポリエステルモップは大理石の種類によっては使用禁止のものもある。これ等の用具で皮膚摩擦を繰り返すと、色素が皮膚に沈着して摩擦黒皮症を引き起こす。
6:手袋によるアレルギー
これ等の手あれや皮膚障害を防止するには、まず手袋の使用である。
ところが現場の立場からは、手袋の使用は作業性が格段に悪くなる。作業時間に余裕があればともかく、特に駅舎などのトイレ清掃がその代表例である。この点を説明してもなかなか部外者には理解されない。
その上、手袋の使用によって100%防止できるとは限らない。洗剤の成分によっては、特に揮発性の高い無機薬品や微粉の無機薬品の場合は防げないことが多い。そして、大体手袋は通気性が悪い。
手袋の性能は、作業性と清掃品質に大きく関係する。作業性と薬品防御性が良く、通気性が高い手袋があれば、喜んで使う。
手袋には、1:合成ゴム(SBR)、2:天然ゴム、3:塩化ビニール、4:ポリエチレン、ポリプロピレン、がある。
メーカーの資料には、単品薬品に対する耐性は発表されている。しかし、これではビルメン現場では使用できない。どの洗剤が、どの種類の手袋に適しているかは分からない。洗剤に含まれる成分と濃度が分からないからである。
そこで、30年前に実名の洗剤でテストを行い、データベースを作成した。しかし指導講師、販売業者、関連協会の反対のため発表できなかった。
以前にあった東京駅でのテロ騒ぎは、乗客がペットボトルにトイレ用洗剤の硫酸を入れて持ち込んだところ、溶け出して座席を濡らし、素材のナイロンとポリウレタンを分解して、車両内に煙が出た……というものであった。
この乗客はビルメン業者で、市販トイレ洗剤より落ちるとして分けてもらった洗剤だった、との話もある。このように、時間がたつと穴が開く事例が多い。
写真:手袋テスト容器
この容器はカーぺット判別、ワックス判別、カーぺット洗剤判別などにも使える共通容器である。
7:手あれ防止研究の解禁を
以上、述べてきたとおり、手あれ問題は60年代から存在した。
苛性ソーダ、メタ珪、ターペン、パークロールエチレン、弗酸などによる手あれや皮膚障害である。
これ等の単品薬品につては、解説や使用上の注意は解説しやすい。また、これ等の薬品について問題があれば、対応は中毒110番などで相談できる。しかし、洗剤などでは、内容を理解していなければ、対応も出来ない。
最近のビルメン業界では、清掃機械の性能表示や洗剤の安全ラベルなど、現物とカタログ内容が異なる製品が増えている。これ等の点を指摘すると、販売業者からの抗議が来ることが多い。これでは現場のクリーンクルーは立つ瀬がない。
ビルメンの必要性のキャンペーンが行われても、現場の健康管理について取り組まないと、現場への労働力の定着率も向上しない。現場品質インスペクションを行うためには、現場環境のインスペクションが必要である。現場のクリーンクルーの指の保護はぜひ必要である。
それと同時に、事実上禁止されている掃除機械の性能管理、洗剤の安全性、内容と表示の整合、自在箒、モップ、スクイジーなどの品質管理と判別技術など、基礎研究の充実が要求されている。
ビルメン業界の表面だけの改善では、業界の改造にはならない。
まず、これ等の取り組みへの、50年来の反対圧力を除去していただきたい。
手あれ、皮膚障害、手袋のかぶれの増加と原因
著 木村光成 先生
業界紙『ビルクリーニング』で、現場の手あれ問題が取り上げられている。
ビルメン業界50年の歴史で、初めてのことである。
建前上、ビルメンでは手あれは存在しないことになっていて、実質上のタブーであった。これを打ち破ることは画期的なことであり、現場にとって大きな福音である。
1:手あれの現状
最近になって現場から、手あれ、皮膚障害、手袋のかぶれの相談が増えている。
この問題について、特に軽度な手あれについては、ビルメン業界では過去に取り挙げられたことはない。『手あれまで労災に含められてはたまらない』との考えが業界にあり、建前上、ビルメン業界に手あれは存在しないことになっている。
しかし、手あれはアトピーの前触れとなる場合もあり、現場において最も数の多い、深刻な労災といえる。
国民生活センターには『カーぺットをクリーニングした後、家族全員の足がかぶれた』という相談もあり、特にハウスクリーニングについては、残留洗剤の問題とも関連する大きな問題である。
これについては、30年前、インテリアクリーニング協会の林先生の意見で、洗剤と手あれの研究を全国ビルメンメンテナンス協会に提案した経緯がある。しかし、当時は前記の理由で取り挙げられなかった。また、資材商組合からも強い反対があり、手あれを起こすのは『現場が手袋をしないのが原因である』として、手あれの原因は洗剤にはないとの見解であった。
しかし、これは現場を知らない人の見解であり、手袋によるかぶれの増加もあり、一ヶ月でも下請現場に入れば、現場が手袋をしない理由が理解できる。

しかし、これに反して、家庭用とは逆に下請現場では、建前とは別に、多くの危険な洗剤が使用されているのが現実である。苛性ソーダ、酸性フッ化アンモニウム、高濃度過酸化水素、などである。
これ等を含む洗剤は、むしろ劇物であり、皮膚の影響は手あれではなく、火傷や皮膚の壊死などの皮膚障害である。しかも、使用上の注意が余りに少なすぎる。
写真:石材用しみぬき剤による皮膚障害、高濃度過酸化水素
2:現場から見た手あれの原因
手あれについては皮膚科の医療部門で多くの研究があるが、ここではビルメンの立場で考えてみたい。
なぜ手あれが出るのだろうか。その理由は、我々人類は海から生まれてきたということにある。我々の血液が海水の組成に近いということも、それを裏付けている。
我々の皮膚は、水に対して耐性がある。そして、それは油により得られている。皮膚の表面には皮脂線があり、常に油を皮膚に補給している。その油を洗剤が取り去るため、皮膚が耐性を失う状態が手あれの原因と、我々現場は認識している。
もともと自然界に存在しない界面活性剤や溶剤に対し、我々の皮膚は対応できない。そのため、界面活性剤や溶剤は、皮膚から体内に浸透してゆく。塗り薬は油に薬品を溶解してあるため、皮膚を通して薬品が体内に入り込む、ひとつの手段である。
通常、油は我々の消化器官で消化酵素の力で乳化分解されて、体内に取り込まれる。このように考えると、消化酵素は一種の洗剤ともいえる。皮膚を通して自由に体内に入れる溶剤に有毒物が溶けていたら、または、その溶剤に毒性があったら、人体は大きな損傷を受ける。これに対し、水溶性の毒物は飲まない限り、比較的体に害はない。
手あれは、皮膚の脂分を界面活性剤や溶剤が取り去ることによって起きる。石鹸でこの害が少ない理由は、ある程度の汚れ(油分)を落とすと効果がなくなるからである。言い替えれば、石鹸はすぐ落ちなくなるという欠点を持っているということでもある。これは、特に洗浄効果を求めるビルメン現場では、受け入れにくい欠点である。
3:手あれの増加の原因(中性は安全、安全ラベルは正確であるという神話)
手あれは人によってまちまちであり、手あれの起きやすい人と起きにくい人がある。
しかも、ビルメン現場で使用される洗剤類は、家庭用と異なり、強力なものが多い。当然、手あれは多いはずであるが、関連協会で今まで取り挙げられなかった理由は、現場の声や実情が汲みあげられないことと、現場に手あれや皮膚障害情報が届かないからである。特に下請孫受けの場合や、ハウスクリーニングでは、危険な洗剤が多く使用されている所ほど、これ等の情報が届かない。
情報は販売業者を通した情報に限られる。販売業者が販売のマイナス要因である手あれについて話すわけがない。
ところが、最近、手あれや皮膚障害、発疹などが増加しているとの声が、現場から聞こえてくる。
その原因には、以下のことが推測される。
A:内容を正しく表示していない洗剤の増加。 特に輸入品に多く、三燐酸ソーダやメタ珪など、脱脂力の強い薬品が配合されている。メタ珪はガラス、石材などに適さないといわれている。また、有りん洗剤は自然に優しいとはいえない。 B:中性洗剤は安全か? 手あれ増加の最も大きな原因は、中性洗剤は安全という間違った神話である。 そこへ廃水規制が加わり、益々中性洗剤がもてはやされた。しかし、洗浄力は落とさないことが要求される。そこで、中性化の代償として、より強力な界面活性剤と、より強力な溶剤を大量に配合した中性洗剤が出回っている。また、アルカリ洗剤も溶剤配合や、より強力なアルカリビルダーを使用した洗剤が増加している。 最近発売された外壁用洗剤は、最も強力な塗料をも溶かす溶剤メチルエチルケトンを大量に配合したために、使用時の換気を要求しているほどである。これはむしろ溶剤そのものに近い。溶剤は下水には流れないが、空気中に拡散する。この中性洗剤で手を洗えば、手が最高に荒れることは間違いない。シンナーで手を洗うのと同じである。 ノンリンスという神話も溶剤使用を加速している。また、溶剤による剥離も柑橘類の成分リモネンを使用した製品が発売されているが、この溶剤もアトピー原因説がある。 すなわち、天然溶剤は決して、100%安全なものではないということである。 |
4:最も有効なパッチテスト
最も有効な肌あれや皮膚障害などの検査は、パッチテストである。
これは1センチ程度の円形ろ紙に、薄めた洗剤をしみこませて、腕の内側などに貼り付け、一定時間後に皮膚の変化を確認する方法である。頭髪染色液の説明書に記載されているから、参考にされたい。ビルメン業界では、ぜひ必要な研究である。
肌あれ、皮膚障害、アトピーなどは個人差が大きく、原因物質も特定しがたい。そのうえ、手袋に対するアレルギーも存在するため、ゴムや布を対象にしたパッチテストも必要である。ゴム手袋アレルギーには、全身蕁麻疹などの重篤な症例もある。
ビルメン業界内部でこのテストを行っておけば、現場クリーンクルーの肌あれなどに対する原因物質の特定と対策が立案できる。
協会指導講師が皮膚科に聞けばよいと説明するが、医療関係者といえどもデータがなければ予防も対策も不可能であり、過去50年間、この問題を避けてきたために現場データは少ない。
まず、業界が取り組みを行わなけれならない時期に来ている。『皮膚障害等製品生体障害事故解析技術の開発』という解説でも、データー集積の必要性を述べている。
30年前に現場の人たちが取り組んだ事例を以下に示す。
このような表にしておけば、後で反応洗剤を絞り込み、特定物質を決定できる。30年前に横浜キョーエイの現場で実施したが、資材業者の反対で発表できなかった
現場使用洗剤危険度表(洗剤データベースより) ×明確な反応 △反応あり ○反応なし |
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商品名 | 1000倍液 | 100倍液 | 10倍液 |
A社A洗剤 | ○ | ○ | △ |
B社B洗剤 | ○ | △ | × |
C社C洗剤 | × | ||
注:劇毒物を含むものは、パッチテストを行ってはならない。 |
5:化学繊維製品と研磨剤による皮膚変化
その他に、手あれに関連すると考えられるものに、ナイロンタオル、研磨材入りスポンジ、メラミンスポンジ、ポリエステルタオルがある。これ等は綿やレーヨンなどと違い、水分を吸収しないことと、はるかに硬さがある。
最も硬いメラミンスポンジは大理石を削り取り、ポリエステルモップは大理石の種類によっては使用禁止のものもある。これ等の用具で皮膚摩擦を繰り返すと、色素が皮膚に沈着して摩擦黒皮症を引き起こす。
6:手袋によるアレルギー
これ等の手あれや皮膚障害を防止するには、まず手袋の使用である。
ところが現場の立場からは、手袋の使用は作業性が格段に悪くなる。作業時間に余裕があればともかく、特に駅舎などのトイレ清掃がその代表例である。この点を説明してもなかなか部外者には理解されない。
その上、手袋の使用によって100%防止できるとは限らない。洗剤の成分によっては、特に揮発性の高い無機薬品や微粉の無機薬品の場合は防げないことが多い。そして、大体手袋は通気性が悪い。
手袋の性能は、作業性と清掃品質に大きく関係する。作業性と薬品防御性が良く、通気性が高い手袋があれば、喜んで使う。
手袋には、1:合成ゴム(SBR)、2:天然ゴム、3:塩化ビニール、4:ポリエチレン、ポリプロピレン、がある。
メーカーの資料には、単品薬品に対する耐性は発表されている。しかし、これではビルメン現場では使用できない。どの洗剤が、どの種類の手袋に適しているかは分からない。洗剤に含まれる成分と濃度が分からないからである。
そこで、30年前に実名の洗剤でテストを行い、データベースを作成した。しかし指導講師、販売業者、関連協会の反対のため発表できなかった。
手袋耐洗剤性一覧表(手袋データベースより) ○ 安全 △ 一部溶解注意 × 使用不可 (比較のため洗剤に配合例のある単品薬品事例を記載) |
||||
洗剤名 | 合成ゴム | 天然ゴム | 塩化ビニール | ポリエチレン ポリプロピレン |
濃硫酸 | × | × | △ | △ |
メチルエチルケトン | × | △ | × | × |
A社A洗剤 | △ | △ | × | △ |
B社B洗剤 | × | × | ○ | ○ |
手袋テストは、手袋素材断片をテスト容器に入れ、48時間後に水洗いして評価。 洗剤名、濃度、温度を記載。 |

この乗客はビルメン業者で、市販トイレ洗剤より落ちるとして分けてもらった洗剤だった、との話もある。このように、時間がたつと穴が開く事例が多い。
写真:手袋テスト容器
この容器はカーぺット判別、ワックス判別、カーぺット洗剤判別などにも使える共通容器である。
7:手あれ防止研究の解禁を
以上、述べてきたとおり、手あれ問題は60年代から存在した。
苛性ソーダ、メタ珪、ターペン、パークロールエチレン、弗酸などによる手あれや皮膚障害である。
これ等の単品薬品につては、解説や使用上の注意は解説しやすい。また、これ等の薬品について問題があれば、対応は中毒110番などで相談できる。しかし、洗剤などでは、内容を理解していなければ、対応も出来ない。
最近のビルメン業界では、清掃機械の性能表示や洗剤の安全ラベルなど、現物とカタログ内容が異なる製品が増えている。これ等の点を指摘すると、販売業者からの抗議が来ることが多い。これでは現場のクリーンクルーは立つ瀬がない。
ビルメンの必要性のキャンペーンが行われても、現場の健康管理について取り組まないと、現場への労働力の定着率も向上しない。現場品質インスペクションを行うためには、現場環境のインスペクションが必要である。現場のクリーンクルーの指の保護はぜひ必要である。
それと同時に、事実上禁止されている掃除機械の性能管理、洗剤の安全性、内容と表示の整合、自在箒、モップ、スクイジーなどの品質管理と判別技術など、基礎研究の充実が要求されている。
ビルメン業界の表面だけの改善では、業界の改造にはならない。
まず、これ等の取り組みへの、50年来の反対圧力を除去していただきたい。