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ビルメンから見た電気安全法

ビルメンテナンス情報『ビルメンから見た電気安全法』 ビルメンテナンス情報
ビルメンから見た電気安全法(1)

著 木村光成 先生

 電気用品取締り法(電取り)という怪物が生き返ってきた。……と、いうのがビルメン現場にとっての実感であろう。
 この法律とビルメンの関係を知る人は、現在ほとんどいない。ビルメンテキストにも、電源やブレーカーなど配線の面から、いわゆる電気的工作物の面からの記載しかなく、ビルメンの清掃機械とその歴史を全く知らない著者、おそらくビルメンでいう設備の関係者が作成しているのが明白である。これらの人たちはおよそ清掃自体を知らないし、清掃機械の性能低下より、ブレーカーが落ちることの方が問題なのであろう。
 今回問題になるのは、中古の清掃機械がPSEマークがついていないと販売できないということで、ビルメン資材業者が影響を受けるということと、今まで野放しだった清掃機械の輸入業者に、登録とマーク取得の必要が生じる点である。

 この法律とビルメン業界の係わりを1950年代から見てみたい。これについては、ビルクリーニングの面白機械学の中で少し触れている。筆者自身1970年代、この認可を取得した関係上、かなりビルメンと同法の係わりを知ることが出来た。
 今回、同法の対象になる可能性のある清掃機械は、1kw以下という条件があり、①ポリッシャー ②掃除機(バキューム) ③リンサー ④高圧洗浄機 ⑤しみ抜き機、などが該当する。明らかに対象外なのは、電池やバッテリー使用清掃機械(自動床洗浄機)である。また、移動してコンセントに差し込むというのもひとつの条件である。少数台数を自社のみで使用する試作開発機械は、販売目的でないから対象外である。
 ところで、ビルメン業界と、認可された電気用品に〒マークをつけるという電気用品取締り法との関わりは意外と少なく、当時輸入清掃機械を取り扱う業者はほとんど取得していなかった。業務用機であり、アメリカのULを取得していると解釈していた。当時からこれを取得している業者は、丸林電気と武蔵電気のポリッシャーメーカーぐらいで、あとは大手家電メーカーのバキューム類であろう。

 輸入清掃機のほとんどは取得していない。これはビルメンの発祥が米軍にあったことによる。
 払い下げヒールドをわが国で使用することに対する反対は、占領軍に対する反対である。
 60年代に入り、カーぺットマシンのアドバンス、サーテファイド、クラークなどが輸入されても、これらは120V仕様であり、日本の100V電源では性能がかなり低下した。この点について問いただすと「100V、50、60サイクルの国は日本だけで、電気に関しては世界一の後進国である。日本も120Vにすべきであり、車も右側通行にすべきである」というのが、当時、クラーク社のセールスマンの答えであったことを鮮明に覚えている。
 日本からの輸出車に右ハンドル車はない。一方で、外車が右ハンドルにしたのはつい最近である。こういった考え方の違いが、アメリカの清掃機械メーカーなどに現在も感じられるのは、このような歴史があるからであろう。またアメリカメーカーは未だにISOを取得せず、インチサイズのボルト使用が多い。
 120V仕様の製品は、100Vで使用すると電流、電力など数値に影響する。場合によると、法の対象になるか否かに関わる。120Vでは1kwでも100Vでは1kw以下の場合も考えられる。
 いずれにしても、この法律(輸入清掃機に〒マークをつける)はビルメン業界では反対が多く、輸入機械が〒マーク無しを黙認されていたことは、資材商にとっては歓迎すべきであった。1985年に行われた通産・建設研究でも、この問題を取り挙げることにワックスメーカーとビルメンが反対したのは当然である。

 しかし、旧電気用品取り締まり法時代とは条件が異なる。
 現在はハウスシック問題やPL法があるし、また、JIS規格が改正され、ダストの回収率で性能測定する方法(JIS9802)を採用せざるを得ない状態になっている。対して、旧法の考えは、極端に言えば感電しないことだけが重要で、性能は二の次であった。『リンサー訴訟(※注)』も、当時PL法があれば販売業者が敗訴した可能性がある。
 なお、リンレイなど大手メーカーが古物商の認可を取っているのは、当時電取りの認可取得より、はるかにビルメンに適していたからである。

 法律は運用のさじ加減である。今回は中古品業者から強い反対が起きている。
 いずれにしても、電気用品安全法の適用が、現実に正確にどこまで適用されるかが大きなポイントである。
 輸入清掃機械への適応が行われれば、旧法よりかなり厳しくなる。たとえば1kw以下の清掃機とすると、100Vで力率を計算して正確に測定すると、120V表示の外国機は1kwを切る事例もありえる。
 同時に、ビルメン業界でタブーであった、清掃機械の性能管理問題も避けて通れなくなる。また、使用部品120V用コードが使用されている場合や、雑音防止コンデンサーの問題など、多くの問題が存在する。これ等の問題が以前と同様の実施であるのか、新法どうりに厳しく適用されるのかが大きなポイントである。
 電気用品安全法は、関連法規と連動すると、清掃機械輸入業者、資材業者、ビルメン現場にもかなりの波紋をもたらす可能性がある。
 電気用品安全法の要旨は、あくまでも安全性であり、感電しないことにある。
 言い換えれば、吸引力の誇大表示などには無関係であり、これに関しては別の法律があるということである。そして1kw以上は野放しであるということになる。いずれにしても、今後この法律を見守る必要がある。
 ビルメンは、今後人手不足に直面する。いやでも清掃機械の使いこなしが必要になる。その時、品質に大きく関係するのが清掃機械の性能である。できるだけ早く、この問題に取り組む必要がある。少なくとも性能の誇大表示をなくす必要がある。

(※注)『リンサー訴訟』
「120V仕様の清掃器具を、そのまま販売したことがクレームの原因」として、カーペットクリーニング業者が清掃機械販売業者を訴えた事件。


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