さびの現場責任転嫁への対応
ビルメンテナンス情報
『さびの現場責任転嫁への対応』
著 木村光成 先生
さいたま新都心、東京駅近く及び品川のビル群で石材のさびのクレームが発生した。これらの2003年ごろの新ビルの石材にさびが出始めている。
この場合、まずゼネコンが呼ばれ、その結果ビルメン現場が責任を押し付けられ、さび抜きを行う事例がかなりおきている。やはり白系の花崗岩で結晶の大きな石材で、よりさびが目立つため事例が多い。
さびに対する大手ゼネコンの言い分では、設計の段階で鉄分のない石を選択している。もし鉄分があれば1年以内にさびが出るはずである。しかし今になって出るさびは、ビルメンの使用洗剤に原因があり、ビルメンがさび抜きを行うのが当然である。
これに対して、現場は反論資料もなく、ビルメンの営業はまったく知識がないため、すべて責任を押し付けられているのが現状であり、これに対して本社は知らん顔。販売業者はここぞとばかりさびぬき剤を売り込んでくる。
そして本社はまず現場に対して研究費など出すはずがない。ほとんどの現場では、まじめな責任者は身銭を切っている。顕微鏡や測定器を自費で購入している責任者も少なからずいることを付け加えておきたい。
さびの原因は、見方によればほとんどビルメンに責任はない。
以下さびの分類と管理会社への対応法を記す。
なお写真は試みの会実験セミナー『現場でできる鉄さびの見分け方』のときの写真である。
注1、汚れとの判別が現実的に難しい。過酸化水素が汚れに対して多用されるためさびが呼び起こされることが多い?
注2、統計データではない。傾向を示す資料である。
石材の含有鉄分判別
この方法は小型磁石を使う方法で、金の掛からない点はビルメン向きである。また一部編集委員の反対で協会テキスト石材メンテナンスから削除された技法である。
小型磁石が石に吸い寄せられれば、鉄分があり、さびが出る可能性があることが証明できる。ただしこれはさびに対する一部の条件に過ぎない。
以下、手元にある花崗岩のテスト写真を列記する。このテストでさびの危険を5段階に分けて表示し、写真をつけて管理会社に提出しておけば、利口なゼネコンはビルメンの責任とは言わない。
本年鉄さびの実験セミナーで行い、参加の何社かは実行している。ただし5段階表示は対数であり、できるだけ強力な磁石を使うことである。やむを得なければピップエレキバンを使うのが安くてよい。
鉄分の多いものは磁石が石面につき糸がたるむ。弱いものは糸が石に吸い寄せられる程度である。この現象はおなじ石種でも同一ではないし、石の部分によって強弱が異なる。カレドニアがその代表である。
この測定を現場の石材について行い報告書にあげておく。特にさびの出やすい海風の当たる面などは念入りに行っておけば、クレームにならないばかりでなく、サービス作業が有料になる場合もある。
以下に上記の測定例を表記する。
『さびの現場責任転嫁への対応』
著 木村光成 先生
さいたま新都心、東京駅近く及び品川のビル群で石材のさびのクレームが発生した。これらの2003年ごろの新ビルの石材にさびが出始めている。
この場合、まずゼネコンが呼ばれ、その結果ビルメン現場が責任を押し付けられ、さび抜きを行う事例がかなりおきている。やはり白系の花崗岩で結晶の大きな石材で、よりさびが目立つため事例が多い。
さびに対する大手ゼネコンの言い分では、設計の段階で鉄分のない石を選択している。もし鉄分があれば1年以内にさびが出るはずである。しかし今になって出るさびは、ビルメンの使用洗剤に原因があり、ビルメンがさび抜きを行うのが当然である。
これに対して、現場は反論資料もなく、ビルメンの営業はまったく知識がないため、すべて責任を押し付けられているのが現状であり、これに対して本社は知らん顔。販売業者はここぞとばかりさびぬき剤を売り込んでくる。
そして本社はまず現場に対して研究費など出すはずがない。ほとんどの現場では、まじめな責任者は身銭を切っている。顕微鏡や測定器を自費で購入している責任者も少なからずいることを付け加えておきたい。
さびの原因は、見方によればほとんどビルメンに責任はない。
以下さびの分類と管理会社への対応法を記す。
なお写真は試みの会実験セミナー『現場でできる鉄さびの見分け方』のときの写真である。
鉄さびの原因 |
もらいさび。 シャッター、案内板などの石に接触した、または比較的近い鉄製品からの水酸化鉄が、石材表面で酸化鉄に変化したもの。 |
エフロさび。石材下部の水道(みずみち)から染み出した水分に水酸化鉄を含んでいた場合。ぬれいろさび。 |
雨水さび。 建物上部や雨どいからの水に含まれている水酸化鉄によるもの。 |
石材内部に含まれていた鉄分によるもの。 |
石材表面、または内部の鉄分がしみぬき剤(過酸化水素)で発色したもの。 |
石材表面、または内部の鉄分がタンニン(お茶)などにより黒く発色したもの。 |
石材別さびクレーム | |
石種 | ビルメン現場からのさびクレーム事例 |
花崗岩 | もっとも多い。 茶、黒、赤、白、ベージュの本磨き石材に多い。 黄色系、恵那錆などの過酸化水素やバーナーによる赤変が多い。 |
大理石 | 黄化が問題になる。 その他過酸化による赤化も多い、ポテチーノなどの割れ目の変色。 |
石灰岩(ライム) | 磨き、水とぎ、は問題になるが割り肌は少ない。 |
スレート | 割りはだが多く、また外装使用が多く、さびはあまり問題にならない。 |
クオーツサイト | |
中国産花崗岩 | 情報が少ないのか、使用期間が短いためか事例が少ない |
注2、統計データではない。傾向を示す資料である。
![]() さびの色は茶、赤、黒、紫などさまざまである。 さびの判別には、現場では金のかからないチオグリコール酸アンモニウムの標準液で、赤紫に変化を見るのがよい。ただしこれは酸側に移りやすいため、磨きの場合、アンモニアを使うことがポイントである。 |
石材の含有鉄分判別
この方法は小型磁石を使う方法で、金の掛からない点はビルメン向きである。また一部編集委員の反対で協会テキスト石材メンテナンスから削除された技法である。
小型磁石が石に吸い寄せられれば、鉄分があり、さびが出る可能性があることが証明できる。ただしこれはさびに対する一部の条件に過ぎない。
以下、手元にある花崗岩のテスト写真を列記する。このテストでさびの危険を5段階に分けて表示し、写真をつけて管理会社に提出しておけば、利口なゼネコンはビルメンの責任とは言わない。
本年鉄さびの実験セミナーで行い、参加の何社かは実行している。ただし5段階表示は対数であり、できるだけ強力な磁石を使うことである。やむを得なければピップエレキバンを使うのが安くてよい。
![]() 1.中国産花崗岩(黒、水とぎ) |
![]() 2.中国産花崗岩(黒、磨き) |
![]() 3.中国産花崗岩(白) |
![]() 4.バルチックブラウン |
![]() 5.イナダ |
![]() 6.ブルーパール |
![]() 7.モンチーク |
![]() 8.カレドニア |
鉄分の多いものは磁石が石面につき糸がたるむ。弱いものは糸が石に吸い寄せられる程度である。この現象はおなじ石種でも同一ではないし、石の部分によって強弱が異なる。カレドニアがその代表である。
この測定を現場の石材について行い報告書にあげておく。特にさびの出やすい海風の当たる面などは念入りに行っておけば、クレームにならないばかりでなく、サービス作業が有料になる場合もある。
以下に上記の測定例を表記する。
さびの出やすさ | ||
No. | 石種 | 鉄分量の目安 |
1 | 中国産花崗岩(黒、水とぎ) | 5 |
2 | 中国産花崗岩(黒、磨き) | 2 |
3 | 中国産花崗岩(白) | 5 |
4 | バルチックブラウン(茶) | 3 |
5 | 稲田(白) | 2 |
6 | ブルーパール(青) | 4 |
7 | モンチーク(茶) | 5 |
8 | カレドニア(ベージュ) | 5 |